1945年8月15日。朝から、四平駅に終結命令で、駅前広場は数千人の日本人の家族連れで、カンカン照りの真夏の太陽の下、大変な混雑だった。我が家はお祖母ちゃんと、母と私と弟、父は勿論満鉄の職場の責任者の一人だから、その列の中にはいない。

 弟は、未だ国民学校4年生だから、余り深い意味は解っていないので近所の子供たちとはしゃいでいた。

 12時のサイレンが鳴り、駅のスピーカーが、「皆さん静粛にお願いします。」と怒鳴っていた。

 「ただ今から、重要な放送がありますから、皆さん静粛に聴いてください。」そして「君が代行進曲」の放送がなり

始めた。
 放送は、ラジオ放送の中継に変わった。
 アナウンサーが「ただ今より,天皇陛下の<ガーガー、ピーピー〉がXXXですから、静粛にお聞きください。xxxx

 「xxxxxによって、連合軍にxxx服することにxxxppgAGA;
耐え難きを耐え、忍びがたきを忍び、XXXXとなって、XXX乎jgbsxxx。・・・・」さっぱり意味が解らないが、「耐え難きを耐え>と言うから、国民全員で玉砕しろ」と、仰ったんじゃないか?」

 玉音放送は、ノイズが厳しくて、意味が聞き取りにくかったが、結局戦争は負けたと言うことらしかった。

「耐え難きを耐え、と天皇が仰ったのは、いよいよ本土決戦になる。 」と仰ったのじゃないか?」

「いや!そうじゃない無条件降伏と聞こえたみたいだけど・・」

「バーカ!日本が戦争に負けるわけないじゃないか?」「いざとなったら神風が吹くさ」

「だって、廣島と、長崎に原子爆弾が落とされて、全滅だって!」

「東京も、大阪も、大空襲で、丸焼けだって、」

子供たちも、大人たちも、喧々諤々、・・・・

あちこちで、掴み合いの喧嘩になる所もあったりした。

再び、駅のスピーカーが「私は駅長です。皆さん、放送をお聞きになったように、天皇陛下は「これ以上、国民を死なせるわけには行かない」と、連合軍に降伏されることを決意され、無条件降伏されました。

 秩序を守って、日本人である誇りを持って行動してください。
 本日はこれで解散しますので自宅に戻って、戸締りをきちんとして、不審なものは家に入れないようにして下さい。」

「市公署(市役所)のXXです。駅長さんから報告があったように異常な事態となりました。どのような不祥な事態が発生するか予測できませんが、当局は出来る限り市民の安全を守るために努力しますので、流言蜚語に惑わされずに、今後のことは隣保班を通じて、-また連絡しますから、外出は控え、静かに落ち着いて連絡をお待ちください。」 

 私たちは、疲れた身体で、自宅に帰り、釘付けした玄関を開けて、家の中を点検したが、盗まれたり、荒された様子はなかった。

 暫くすると、中学の級友や、近所の友人たち、中国人(未だ満州人と呼んでいた。)友人たちも集まって来た。

 「リンムーチン(鈴木清の中国読み)大変だ、日本戦争に負けたぞ!
 知ってるか?ラジオ言っていた。」日本人の中の一人が「日本が戦争負ける訳ないじゃないか、日本は神様の国だぞ、いざとなったら神風が吹くって、先生が言ってたじゃないか?」

 そこで中国人の友人で、頭のよい金くんが、「それは、おかしい、日本には日本の神様がいる様に、中国には中国の神様、アメリカや、イギリスには、アメリカやイギリスの神様がいるよ。
 なぜなら、神様はそれぞれの国の先祖だからね。
『自分の子供が可愛い』のが親の気持ちだから、『自分の国の国民が可愛い』のは神様の気持ちだ。どの国の神様も同じ気持ちの筈だ」

 これは、皆も説得力を感じて、納得したようだ。アメリカの原子爆弾の威力は、既に情報が入っていたし、日本の主な都市の殆どがアメリカの無差別爆撃で焼き尽くされていることは、ラジオで知っていた。

 親父のオールウェーブのラジオで聞いていたが、外国のデマ放送だと思っていたのだ。(続く)