嗅球に感染する最も手っ取り早い最も有害な方法は、嗅覚ニューロン(OSN)の神経細胞貫通ルートであろうが、幸いなことに、これはCOVID-19の無嗅覚症またはウイルス侵入にも重要なルートではないと思われる。

嗅覚ニューロンはアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)レセプターや、SARS-CoV-2が細胞内に侵入するのに必要な膜貫通プロテアーゼ・セリン2(TMPRSS2)などの膜貫通プロテアーゼを発現していない。

一方、嗅覚上皮の支持細胞におけるACE2の発現は、呼吸器上皮の他の部分よりも数百倍高い。

このため、篩骨板に隣接する鼻腔上部の凹みでは、極めて高いウイルス負荷が生じる可能性がある。

SARS-CoV-2感染によって大きな影響を受ける嗅覚上皮の他の非神経細胞は、ボーマン腺、基底細胞(新しい嗅覚ニューロンを生み出す幹細胞)、嗅覚被包細胞である。

これらすべてに感染すると、突発性無嗅覚症が生じるが、その原因は末梢性である可能性が高い。

したがって、炎症によるCOVID-19の急速な無嗅覚症は、その潜伏期間の短さと、ほとんどの場合、寛解が早いことを考慮すると納得がいく。

Kay, J Neurophysiol 128 436 2022
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35894511/