- 夏の終わり、朝の博多駅は少しだけ涼しい風が吹き抜けていました。
集合時間は8時20分。まだ眠たそうな顔をしている人もいれば、旅のワクワクで笑顔がこぼれている人もいます。今日の行き先は、佐賀県。湿原の自然、佐賀牛ランチ、新しい道の駅、そして薬の博物館まで、盛りだくさんの1日です。
1. 九州の「尾瀬」――樫原湿原へ
8時30分、バスはゆっくりと博多を出発しました。市街地を抜けると、窓の外には田園風景と低い山並み。ガイドさんの説明によると、最初の目的地「樫原湿原（かしばるしつげん）」は、標高600メートルほどの高原に広がる九州有数の湿原で、「九州の尾瀬」と呼ばれているそうです。
現地に到着すると、澄んだ空気と涼やかな風が迎えてくれました。木道が敷かれた湿原には、季節の花々が咲き、足元の水辺にはトンボが舞っています。8月後半〜9月初めのこの時期は、ミズギクやサワギキョウ、そしてワタスゲのふわふわした白い綿毛が見られ、まるで小さな絵本の世界。
50分の自由散策では、木道をゆっくり歩きながら、足を止めて写真を撮る人、湿原の静けさに耳を澄ます人、それぞれの楽しみ方がありました。2. 甘党にはたまらない――元祖 吉野屋の白玉饅頭
湿原を後にしてバスに揺られること約30分。次の立ち寄りは、小さな和菓子屋「元祖 吉野屋」です。創業は江戸時代という老舗で、看板商品は「白玉饅頭」。
店に入ると、蒸し器からふわっと立ちのぼる湯気と甘い香り。
白玉粉で作られたお饅頭は、つややかな白い姿をしていて、もちっとした食感とほどよい甘さのこしあんが絶妙。お土産用に包んでもらいつつ、その場でひとつ頬張ると、口いっぱいに幸せが広がります。
15分という短い滞在でしたが、「旅の途中で食べる和菓子って、どうしてこんなに美味しいんだろう」と、改めて実感しました。3. 佐賀牛と肥前さくらポークの陶板焼きランチ
お待ちかねのランチは佐賀市内のレストラン。メニューはなんと、佐賀牛と肥前さくらポークの陶板焼きです。
テーブルに運ばれてきた陶板の上には、美しく並んだ薄切りの佐賀牛と、脂がきめ細やかなさくらポーク。火をつけると、じゅうっと音を立てて脂が溶け、肉の香りが広がります。
佐賀牛はやわらかく、噛むほどに旨みがあふれ、さくらポークは脂が甘く、口当たりが軽やか。添えられた地元野菜もシャキッとしていて、シンプルな焼き方なのに素材の力を存分に感じます。
約50分の昼食時間はあっという間。お腹も心も満たされ、午後の観光へ向かいます。4. 2025年オープン！道の駅かみみね
午後最初の立ち寄りは、2025年にオープンしたばかりの「道の駅かみみね」。建物は木の温もりを感じるデザインで、地元の農産物や特産品がずらりと並んでいます。佐賀牛カレー、呼子のいかしゅうまい、地元産のフルーツジャムなど、お土産コーナーは目移りするほどの充実ぶり。
中でも人気だったのが、オープン記念として販売されていた「かみみねプリン」。なめらかで濃厚な味わいに、思わず2個買ってしまった方もいました。
30分の滞在でしたが、「新しい道の駅って、地元の人の熱意が感じられて面白いな」と感じました。5. 薬の歴史を知る――中冨記念くすり博物館
最後の訪問地は「中冨記念くすり博物館」。全国でも珍しい、薬の歴史をテーマにした博物館です。
館内に入ると、まず目に飛び込んでくるのは江戸時代の薬舗の再現コーナー。木製の引き出しや薬研（やげん）、薬草の香りに、当時の人々の暮らしが垣間見えます。
展示は日本だけでなく、中国やヨーロッパの薬文化にも触れられる内容で、薬草園では四季折々の植物が育てられていました。
ガイド付きで巡ると、「この薬草は風邪に効く」「これは昔、染料としても使われた」など興味深い話が次々と飛び出します。
約90分の見学時間は、予想以上にあっという間。薬という日常的な存在が、いかに人類の知恵と歴史に支えられてきたのかを実感しました。6. 博多へ帰着
夕方18時、バスは再び博多駅へ到着。朝からずっと一緒だった参加者同士、すっかり打ち解けて、別れ際には「またどこかで」と笑顔で手を振ります。
湿原の自然、新しい味との出会い、文化や歴史への理解――1日でこんなに多彩な体験ができるのは、バス旅ならではの魅力だと思います。次は秋の紅葉シーズンに、このコースをもう一度訪れたい。そんな気持ちで、夕暮れの街へと帰っていきました。
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