侵略をちらつかせる恫喝に屈しなかった駐露大使はすごい。
日本の駐露大使を露外務省が呼び出し、車両提供巡り大使「全てロシアの侵略に起因」と反論
ロシア外務省は9日、アンドレイ・ルデンコ外務次官が日本の上月豊久駐露大使をモスクワの外務省に呼び、日本がウクライナにトラックなど自衛隊車両の提供を開始したことに懸念を表明したと発表した。
発表によると、ルデンコ氏は日本がウクライナに提供する車両は「装甲車などの軍事装備」だと一方的に主張し、「深刻な結果を伴う」と警告した。在露日本大使館によると、上月氏はルデンコ氏に対し「今回の事態は全てロシアによるウクライナ侵略に起因している。日本側に責任を転嫁しようとする露側の主張は極めて不当で、断じて受け入れられない」と反論した。
ロシアがいかにウクライナに集まる支援に焦っているとはいえ、この恫喝はすさまじいです。
外交の場で、日本がウクライナへの支援に対して『軍事支援』だと批判した上で、それが「深刻な結果を伴う」と警告したとは、どういう意味を持つと、皆さんは思われますか?
これは軍事報復を覚悟しろという恫喝です。
それ以外、受け取りようがありません。
そこまでして、日本にウクライナへの支援をさせないようにしたいのでしょう。
そして日本相手なら、少々の恫喝でも、それで自分が日本に対してやるような軍事演習や戦闘機で領空侵犯すれすれの飛行などといった軍事デモンストレーションで圧迫してこないと踏んでいるから、そこまで舐めた事を言ってのけるのでしょう。
同様の事をアメリカ相手に言えば、タダでは済まないと思うほどのものです。
上月駐露大使は、『今回の事態は全てロシアによるウクライナ侵略に起因している。日本側に責任を転嫁しようとする露側の主張は極めて不当で、断じて受け入れられない』と、きっぱりと反論しています。
活字ではルデンコ外務次官の発言しか出ていませんが、ロシアの交渉術では相手の嫌がる行為をして自分の思惑通りに進めようとする傾向があるので、実際には相当心理的なプレッシャーをかけられていたはずです。
プーチンが外国との首脳会談でわざと(としか思えない)遅刻を繰り返してきたのはよく知られた話ですし、犬嫌いのメルケル元独首相と会談する時は、大型犬を会談場につれてきたりなどといったことをしたなどの、いやらしいマウント取り行為を繰り返す常習犯です。
上がそうなら、その取り巻きもそれを見習っていることでしょう。
上月駐露大使は、相当タフに交渉していたのでしょう。
そして脅しに屈せず、言うべきことを言った。
凄い事です。
ただ許されるなら、ここまでするといいと思いますね。
まず空気を読まないふりをして、『深刻な結果を伴う』が、具体的に一体何を意味するのか、問い質すのです。
それで軍事報復を覚悟しろという恫喝であることを明言させる、少なくともそうとしか取りようがない事をこちらから指摘して、否定しないことを確認するといいと思います。
そしてここからです。
我が国には、「毒を食らわば皿まで」という言葉がある。
貴国に敵対している国に、直接殺傷能力のないトラックを提供するだけで交戦国扱いをし、軍事報復を覚悟しろと言うならば、是非もない。
我が国も欧米諸国に習って、戦車や各種装備品の提供を検討する。
我が国にそういう決断を強いたくないならば、我が国に毒を喰らわせたというような言動はしないことだ。
縁あって貴国に赴任を命ぜられた者として、そのような軽挙に出ないように忠告する。
ロシアのような国には、そういう売られた喧嘩は買うぞ、位の態度の方が良いでしょう。
旧ソ連の時代から、そういうケンカ外交で相手を恫喝して要求を呑ませようとする交渉術が幅を利かせるのが彼らですから。
朝鮮戦争、キューバ危機でも、当初強気一辺倒な態度でしたが、終始アメリカの本気度の恐ろしさにスターリン、そしてフルシチョフ(キューバ危機当時のソ連トップ)も裏でおののいていたのが真実でした。
現状を見れば、プーチンもその例に漏れないようです。
だからこそ、毅然とした態度の取れる人物をロシアに赴任させたのは、正しかったでしょう。
もっとも、私の言うようなケンカ外交は、残念ながら今の外務省は許さないでしょうけど。