シナ提示のウクライナ戦争和平提案は、完全にロシア寄りだった
産経新聞が米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ、電子版)にて26日に報じた記事を引用する形で、シナの中国の李輝ユーラシア事務特別代表が、これまでに面会した欧州各国の当局者に次のように話したと伝えています。
(リンク切れの際は、注目記事2608参照)
「欧州は米国から離れ、ウクライナ国内の占領地域の保有権をロシアに残す条件で即時停戦を呼び掛けるべきだ」
なおWSJによると、欧州側は次のように、李氏の提案を拒否したと報じているようです。
「露軍の撤退なしでの停戦は国際的利益にかなわない」
「欧州を米国から引き離すのは不可能だ」
これでシナの外務省は李氏とEU当局者との会談について次のように談話を出したようですから、何を言わんかですね。
「中国はウクライナ問題に関して常に客観的かつ公正な立場を堅持し、和平交渉を推進してきた」
どうやらシナ語では、公正とか中立という言葉は、日本語や英語などと違う意味を持っていると、疑わざるを得ないようです。
ウクライナが潰走しているならともかく、ロシアを押し返している戦況で、一方的に領土を奪われる提案を呑むはずがない
シナがウクライナに和平提案を提示しているという話は数か月前から出ていましたが、その内容は明らかにされていませんでした。
ウクライナのゼレンスキー大統領から、一時はシナの和平提案に乗り気なような発言をした事もありましたが、その後なしのつぶてのように語られていませんでした。
恐らくはウクライナにとって呑めない内容だったのだろうと想像していましたが、やはりという感じです。
現時点でロシアが占拠した地域の領有をロシアに認めた上で停戦し、しかも欧州がウクライナから手を引けという条件など、今のウクライナが呑めるはずがありません。
そんな条件をウクライナが呑むとしたら、それこそウクライナ軍が潰走して、国家消滅寸前に追い込まれたような状況にでもなった時くらいでしょう。
もしウクライナ戦争(ロシアが言う『特殊軍事作戦』)が開戦当初の電撃作戦が成功してキーウが陥落、ゼレンスキー大統領が捕縛でもされていたとしたなら、あり得た話かもしれません。
しかしそれを凌ぎきり、むしろ開戦前の状況に近づきつつあるほど押し返してきた今のウクライナが呑める条件ではありませんね。
ウクライナを意のままに言う事を聞かせられる関係を持っていないシナには無理な提案だと、なぜ分からないのか?
このような提案を提示してくるようでは、和平の仲介者としての在り様を理解していないことが、よく分かります。
このような一方が、それも敗色が濃い方に肩を持っているとしか思えない条件を呑ませようとするなら、ウクライナがシナに逆らえないような影響力を持っている場合だけです。
軍事力か、経済的に圧倒して、しかもシナなしでは生きていけないような関係になっていれば、ウクライナもシナの横暴な提案を呑まざるを得ないでしょう。
しかしシナとウクライナの関係は、そのようなものではありません。
軍事的にはシナとウクライナは距離がありすぎ、軍事的威嚇は通じません。
せめて軍事援助をシナがウクライナに対し行っていればワンチャンありましたが、そのようなことは一切しておらず、むしろ裏でロシアに援助している節があるくらいですから、その点でもダメですね。
また経済的にウクライナがシナに依存してはおらず、仮に経済援助などをちらつかせたところで『代わりはいくらでもいる』状況ですから、それで依存させることも出来ません。
そしてどちらの面でも、欧米各国が陰に陽に協力しており、日本などもそうです。
シナお得意の札束外交など、この場合、ウクライナには通じませんね。
経済的にシナとずぶずぶになっている欧州諸国ですら、この点では譲らないでしょう。
欧州諸国の老獪さを、シナは舐めていますね。
このような状況でロシア寄りの和平提案をウクライナが呑むはずありませんし、欧州にしてもそうでしょう。
ロシア完全撤退を呑ませれば、今ならまだワンチャンプーチン温存も可能だが、我田引水な下心がロシアとシナの未来を奪うかも?
だからシナが本気で和平提案をするなら、ロシアにクリミア半島を含む一切のウクライナ領から即時撤退を条件に停戦を呑ませるくらいでないと、ウクライナが呑む可能性がない事位、分からないのでしょうかね?
この条件をロシアに呑ませれば、まだウクライナが停戦に応じる可能性はあると思います。
シナが国家のメンツをかけてロシアを完全撤退させれば、今ならまだ、プーチン温存で停戦できるかもしれません。
賠償金は応相談でしょうが、シナがロシアに撤兵を実現させれば、ロシアがウクライナに支払う賠償金は、天文学的金額から常識的金額に減額させる可能性は、まだ残っているかもしれないのですが。
その辺の機微が習近平以下、理解していないか、自分の利益や都合に目がくらんで、出てこないかのいずれかでしょう。
シナは自分に置き換えてみて考えれば、分かりそうなことですがね。
もっとも自国が主張する『台湾は自国領』、『尖閣諸島は自国領』、『琉球は独立すべき(その後理由を付けて自国に編入してやる)』、『南シナ海の島々は自国領』が、周辺諸国や世界に受け入れられないか、理解していないようですから、シナにそれを求めるだけ、無理そうですね。
まあシナがこのような愚案としか言いようがない和平提案しか出せないのも、『力による現状変更』の前例を作って、自分たちの行動への正当性を作りたいのでしょう。
しかしそれは、せっかく小国が大国と対等に話し合いが出来るようにした国際秩序を、19世紀以前の帝国主義全盛時代の秩序に戻すことにつながります。
その意味でも、シナの和平提案など、考慮に値しませんね。
こんなことだから、世界第二位の経済大国になろうとも、シナは世界から信用されず、制裁対象になるのです。
ロシアにしてもシナにしても、大ロシア主義、膨張主義を捨てて、世界各国との共存を選んでいれば違う未来も描けたものを、残念思考に囚われている事が、未来を閉ざすことになっていると言っていいでしょうね。