【音楽教室著作権料裁判】最高裁、生徒の演奏に関して支払い義務なしと判断 | 朱雀ひのでのブログ

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最高裁判所、音楽教室でのレッスンで、生徒の練習演奏のみ著作権料支払い義務なしと判断

 

音楽教室でのレッスンで生徒が楽曲を演奏する際、教室は著作権料を払う必要があるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第一小法廷(深山卓也裁判長)は24日、「払う必要はない」とする判決を言い渡した。支払いを求める日本音楽著作権協会(JASRAC)の上告を棄却し、JASRACの一部敗訴が確定したと報じられました

(リンク切れの際は、注目記事2445参照)

 

この問題は、以下の記事で何度か取り上げてきました。

(事象発生時系列順・元記事の日付による。実際にアップした日順ではない)

 

日本の音楽界を衰退に導く、JASRACの暴挙 2017.2.2

注目記事10~JASRAC、著作権者に版権支払わず 2017.8.18

注目記事2444~音楽教室にスパイ行為を働いていたJASRAC 2019.7.7

注目記事1176~日本の音楽界を衰退に導きかねない判決が、今日下る 2020.2.27

注目記事1177~東京地裁、音楽教室に対する著作権支払い義務を認める 2020.2.28

注目記事1731~知的財産高等裁判所、音楽教室の著作権支払い義務を一部免除の判断 2021.3.18

 

 

生徒のレッスン時の演奏に関して著作権料支払い義務なしと判断した事については、評価できる判断だと見ていいと思います。

その意味で最高裁判所は、妥当な判断をしたと見ていいと思います。

 

ただ片手落ちな判断であることは否めません。

 

音楽教室が何のためにあるのかを、きちんと評価した上での判断ではないと感じます。

そして音楽教室が無くなったら日本の音楽界がどうなるか、JASRACは無論の事、判決を下した裁判官も、どれだけ真剣に考えたのか、疑わしいものです。

 

何しろ「音楽教室の著作権侵害」を立証するため、職員を音楽教室に送り込んでスパイ行為まで働いたのが、JASRACです。

違法とまでは言えませんが、やり方が汚いですね。

やられた音楽教室は、(それを知れば)怒り心頭でしょうね。

 

 

音楽講師の実態は、楽器メーカーや楽器店の職員ではなく、個人事業主

 

音楽教室と言えば、ヤマハやカワイなどの名が思い浮かぶ方が多いでしょう。

しかし全国に散らばる音楽教室のほとんどは、ヤマハやカワイが直営しているものではありません。

 

この辺は知らない方は分かりにくいので、電気メーカーの看板を掲げた町の電気屋さんの仕組みと比べてみます。

 

最近は家電量販店が幅を利かせているので影が薄くなっていますが、全国に点在しているパナソニックショップなどは、個人経営の電気店がパナソニックと提携して看板を掲げているのであって、それらはパナソニックが経営しているものではありません。

あくまでパナソニック商品をメインに取り扱う約束で、パナソニックの看板を掲げる承諾をもらっているというものです。

 

これに近いのが、自動車やバイクのディーラーですね。

トヨタやニッサン、ホンダなどの系列ディーラー以外の個人ないし中小企業ディーラーなどは、そのような形で自動車やバイクメーカーの看板を掲げています。

無論、それらをメーカーが経営に携わる事はしていません。

 

これらの同じで全国各地の楽器店は、町の電気屋さんのような形で、全国各地の楽器店がヤマハやカワイ、ローランドなどと提携して看板を掲げているのです。

 

そしてそれらの提携楽器店に、ヤマハやカワイ、ローランドなどから講師資格認定を受けた人たちが講師登録を行って、その人たちを生徒に紹介する形でレッスンを行っている事が多いです。

つまり音楽講師は各地の楽器店と個人事業主として契約しているのです。

あるいはそうした講師たちが、個人教室を開いて生徒を募集しているケースもかなりあります。

 

つまり音楽教室は、ヤマハやカワイ、ローランドなどが直接経営しているのではなく、音楽講師たちに看板貸しを行っているのが実情で、個人事業主の集合体が実態に近く、つまりほとんどは零細企業なのです。

個人事業主である以上、営利目的で活動しているのは確かですが、その存在意義は次世代の音楽の担い手を育てることのはずです。

 

つまり音楽に特化した、私的教育機関なのです。

 

 

音学教室の教育面をもっと重視して、法改正で著作権料支払い義務を免除すべき

 

以前の記事でも触れた通り、ミュージシャン、演奏家、作曲家、…を育てるのには、文科省に認められた教育機関(義務教育での音楽、音楽高校、大学等)だけでは、まず無理です。

余程才能がある人はともかく、大概の場合、ピアノを始めとした音楽教室に習い、指導を受けて才能を開花させてきた人がほとんどでしょう。

 

ならば文科省に認められた教育機関には著作権料支払いを免除しているのですから、それと同等の扱いをすべきでしょう。

世界に名だたる活躍をしている日本人ピアニスト、バイオリニストや指揮者は何人もいらっしゃいますが、文科省に認められた教育機関(義務教育での音楽、音楽高校、大学等)だけでそこまで技術を磨けた人は、一人としていないでしょうね。

 

特にそこまで技術を磨くには、かなり高度な技術を持った講師に師事しない限り、無理でしょう。

 

それでもJASRACが音楽教室から著作権料支払いを求めるなら、文科省に認められた教育機関(義務教育での音楽、音楽高校、大学等)にも、きっちりそれを徴収しないと、筋が通りません。

 

この違いは、何なのでしょうか?

 

JASRACが音楽教室を軽視しているか、あるいは少しでも著作権料を取ろうと考える故でしょう。

 

しかし既に最高裁で、音楽教室に対しては著作権料支払い義務を認めてしまったので、この点はどうにもなりません。

ただ、日本の音楽界の将来を暗いものにしないためにも、この点を改めるべきだと思います。

 

これまでも様々に法律問題を取り上げてきましたが、解決策は司法の場を既に離れている以上、立法の場に求めるしかありません。

つまり未来の音楽家育成環境を整えるという理念の下、著作権法を改正し、音楽教室に対する著作権料支払い義務を免除するような法改正を、国会議員たちに働きかけることです。

 

 

マンガ、アニメの隆盛は、おおらかに二次著作を許す風土があったことにある

 

以前の記事でも言ったことですが、マンガやアニメがなぜ日本に留まらず世界を席巻するだけのコンテンツになり得たか、よく考えるべきだと思います。

 

コミケ(コミックマーケット)やコスプレなどは、二次著作を厳しく禁じていたら、絶対に生まれなかったものです。

 

名古屋市長自らコスプレパフォーマンスを行っている世界コスプレサミット(今年は終了)などが許される風土があるからこそ、そこから新たな著作物すら生まれ、それがTVアニメ化(シリーズ2期の制作も決定されるほどの人気作)されたほどです。

 

 

 

TVアニメ「その着せ替え人形は恋をする」第2弾PV

 

もし二次著作が厳しく禁じられていたら、この作品は絶対に生まれることはなかったはずです。

 

大切な事だから、最後にもう一度繰り返して言います。

日本の音楽界を隆盛させていきたいのならば、音楽教室の教育面を重視し、音楽教室に対する著作権料支払い義務を免除すべきです。

 

そもそも音楽教室は著作権侵害を目的に設立されたものではなく、未来の音楽家と豊かな音楽制作土壌を育てるためにあるのです。

 

第一クラッシックなど、既に版権が切れたものまで著作権料支払い義務を課すJASRACの姿勢こそ、おかしいと思うべきです。

この辺を考慮しなかった辺りをみても、最高裁の判決は片手落ちだと思います。