注目記事2316~アベノミクスが未完に終わったのは、構造改革が進まなかったから? | 朱雀ひのでのブログ

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金融政策に依存しすぎは賛同しますが、構造改革が進まなかったからは、私としては賛同しかねます。

 

アベノミクスがなければ日本経済はどん底のままだった…そして現在の日本経済が停滞している根本原因

 

 

(プレジデントオンライン 2022/7/14(木) 8:16)

 

■金融政策に依存し、構造改革には至らず

 7月8日、奈良県で街頭演説中に安倍晋三元首相が銃撃され亡くなった。心から哀悼の意を表し、ご冥福をお祈り申し上げる。安倍氏の経済運営の手法=アベノミクスには賛否両論あった。しかし、一つ明確なことは、安倍氏の考えは一時的にではあれ、少なくともわが国の先行きの期待を高めたことは確かだろう。

 

 2012年11月14日、野田佳彦首相(当時)は衆議院を解散すると表明した。それを境に、日本の株式市場は堰(せき)を切ったように上昇した。世界の多くの投資家は、アベノミクスが日本を変えると期待した。経済成長期待は高まり株価が上昇した。2012年末まで日経平均株価の上昇率は20%に達した。

 当時の状況を思い返すと、人々の心理も前向きになった。わが国が一つの希望を持った瞬間だった。需要創出を目指す雰囲気が沸き立ったのである。安倍氏はわが国の将来を真剣に考え、懸命に経済政策を進めた。情熱と発信力を持ったその政治家が、志半ばで凶弾に倒れたことは非常に残念だ。

 ここで、3本の矢からなるアベノミクスを総括したい。アベノミクスを冷静に分析すると、金融政策に依存する割合が高く、結果として構造改革への踏み込みが不足してしまった。特に、わが国経済に必須の労働市場の改革が不十分だったことは否めない。その結果として、好循環は続かなかった。今後、岸田政権には労働市場を中心に構造改革を徹底して進めてもらいたいものだ。それが今後の経済政策の重要ポイントの一つだ。

■「異次元緩和、需要創出、成長戦略」を推進

 アベノミクスは3つの政策から構成された。具体的には、金融政策(日本銀行による異次元緩和の推進)、財政政策(各種景気対策による需要創出)、および構造改革(規制緩和などを進めて個人や企業の新しい取り組みを引きだす施策、成長戦略)だ。アベノミクスが目指した最大の目標は、デフレ経済からの脱却だった。

 3本の矢の中でも、特に依存度が高かったのが金融政策だ。2013年4月4日には日本銀行が“量的・質的金融緩和”を開始した。日本銀行は消費者物価指数の前年比上昇率2%を物価安定の目標に定め、2年程度を念頭にできるだけ早期に実現すると表明した。そのために、大量の資金が金融市場と経済に供給された。企業や個人は資金を借り入れやすくなった。

 

 株式市場では、新しい株式インデックスである“JPX400”の算出が始まった。JPX400は、自己資本利益率(ROE、純利益を自己資本で割った指標)などが高い企業で構成される。企業が借り入れを増やすとバランスシートに占める資本金の割合は低下する。他の条件を一定とした場合、ROEが上昇する。アベノミクスは金融を大胆に緩和して企業などに借り入れを促した。それによって需要を増やそうとした。そのために財政政策も機動的に運営された。

■米経済の回復で円安の流れは強まり…

 大きな影響を与えたのがドル/円などの為替レートだ。2011年10月末、ドル/円は75円32銭の史上最高値を記録した。その後、徐々に円安が進んだ。当時、米国ではデジタル化の加速やシェールガス革命によって労働市場が回復しつつあった。米金利の先高観は高まった。そこに金融緩和を重視するアベノミクスが加わった。日米の金利差拡大観測は高まり、外国為替市場で円キャリートレードが急増した。

 このようにして円安の流れが増幅された。その後も米国経済は緩やかに回復した。インフラ投資や不動産市況の高騰などを背景に、中国経済も高成長を維持した。その状況下でわが国の企業は海外進出を加速し、海外での収益が増加した。海外に保有する資産の評価額や海外子会社からの受取配当金が円安によってかさ上げされた。

■世界的に注目されたアベノミクスの功罪

 アベノミクスは一時、わが国経済にプラスの効果をもたらした。財務省が公表する“法人企業統計調査”からそれが確認できる。2013年4~6月期以降、本邦企業全体(金融除く)で営業利益の増加が鮮明化した。

 製造業に限ってみると、2012年度各期の前年同期比増益率の平均値は8%だった。2013年度は45%に跳ね上がった。アベノミクスが円安を勢いづけ、企業業績がかさ上げされた。それが、賃上げを支えた。安倍総理自ら主要企業のトップを官邸に招き、賃上げを求めた。それを“官製春闘”と呼ぶ。

 その結果、実質ベースで賃金水準は緩やかに上昇した時期があった。アベノミクスは、観光産業にもプラス効果を与えた。2020年までに2000万人の訪日旅行客数を達成することをアベノミクスは掲げた。2015年にその目標は事実上達成された。円安と、わが国の観光資源の魅力向上によるインバウンド需要の増加は、地方創生に大きく貢献した。訪日旅行客数はアベノミクスが達成した数少ない目標だ。

 

■労働市場の改革にまで切り込めなかった

 ただし、アベノミクスは構造改革に切り込むことができなかった。それはわが国にマイナスだ。特に、硬直的な労働市場の改革が難しかった。時代にそぐわなくなった制度や慣行を変える。それによって人々の新しい取り組みを引き出す。それが構造改革の意義だ。わが国では年功序列、終身雇用が続いている。若年層の時は賃金水準が低い。結婚し、子育ての負担が増す世代になると賃金が増える。雇用も安定している。高い経済成長が可能である場合、年功序列や終身雇用は有効だった。

 しかし、1990年代初頭にバブルが崩壊し、わが国は自律的に成長することが難しくなった。多くの企業はコストカットのために正社員を減らした。非正規雇用が増え経済格差は拡大した。産業競争力は凋落している。それでも、年功序列の固定観念から抜け出すことができない企業が多い。成長を目指すためには政府が新しいルールを導入して、既存の価値観を打破しなければならない。その点でアベノミクスは踏み込み不足だった。

■人口減少、内需の縮小、円安、物価高…

 岸田政権は労働市場など構造改革を実行しなければならない。それが経済政策の要諦だ。労働市場改革が遅れるほど、わが国経済の苦しさは増す。わが国の人口は減少している。内需は加速度的に縮小均衡に向かう。それに加えて、金融政策を重視したアベノミクスの副作用として円安が進んでいる。ウクライナ危機などを背景に、世界でインフレも進んでいる。

 特に、資源価格や穀物などの値上がりは鮮明だ。円安と物価の上昇の掛け算によって、わが国の輸入物価は急騰している。5月まで10カ月続けて貿易収支は赤字だ。企業はコストの転嫁を一段と急ぐ。家計により大きな皺寄せがいく。

 その一方で、わが国には強い部分も残っている。超高純度の半導体部材、自動車、精密な製造機器はその代表格だ。強みがあるうちに、政府は年功序列などの雇用慣行を刷新しなければならない。同一労働・同一賃金の価値観を社会に浸透させ、実力によって人が評価される環境整備は急務だ。

 

■世界の変化に対応する力を残したとはいえない

 先例がある。独シュレーダー政権の労働改革だ。主たる内容は、解雇規制緩和、職業訓練強化、失業給付期間の短縮だった。企業は人員を調整し、事業運営の効率性を高めやすくなった。解雇された人は職業訓練を受け能力向上に取り組んだ。失業保険の給付額の引き下げなどが就業を促した。経済全体で、新しい取り組みが増えた。それによってドイツ自動車産業の競争力が高まった。その後、メルケル政権は中国の自動車需要を取り込んだ。こうして1990年代に停滞したドイツ経済は復活を遂げたのである。

 現時点でアベノミクスを総括すると、一時的に好循環をもたらしたことは大きい。安倍氏は、金融・財政政策によって景気を支えた。その上で、労働市場を改革し、経済全体で好循環を持続させようとした。

 しかし、労働市場改革は進まなかった。労働市場の流動性の向上などは、人々の生き方に直接かかわる。それだけにインパクトは大きい。結果として好循環は続かなかった。ウクライナ危機などによって脱グローバル化は加速する。アベノミクスがわが国経済に、急激な環境変化に対応する力を残したとはいえない。長期的に見た場合に必要なのは労働市場を中心とする構造改革だ。それ無くして本当の成長は難しいだろう。

 

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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。
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記事を書かれた方が元銀行員なだけに、キャッシュフローについてはやはりお詳しいですね。

確かに第二次安倍政権前まで続いてきた超円高を止めるのに、異次元の金融緩和が有効で、それが一時期経済の活況をもたらしたのは確かだと考えて良いと思います。

 

ただそこからの分析は一面的か、誤っているように思います。

 

アベノミクスがなぜ未完に終わったのか?

 

それは労働市場改革が進まなかったことが主因ではなく、もっとマクロ経済を見ると見えてくると思います。

 

過去の記事で何度も指摘しましたが、日本経済が完全に浮揚せず、腰折れしたのは、有効需要の不足が主原因でしょう。

民間需要では、経済が冷え込んでいる時には足りないのです。

 

だからそういう時に公共投資を増発することで需要を補い、経済を回転させるべきだったのです。

アベノミクス三本の矢で言えば、第二の矢ですね。

 

これがまともに働かなかったからこそ、アベノミクス第一の矢であった金融政策だけという片肺飛行だったからこそ、息切れしたのです。

 

ハッキリ言いましょう。

アベノミクスを未完に終わらせたのは、財務相が公共投資に資金を出すのを認めなかったのが原因だと。

 

今ものすごい勢いでコロナ対策に国費が支出されており、それが若干のインフレにつながっている気配はありますが、どちらかと言えば、それが海外からの原材料費の行動が引き起こしていると、皆さん感じていますよね?

 

そしてアメリカでインフレが急加速して、それも世界経済のインフレ基調を呼んでいることも。

 

ズバリ言うなら、世界中からワクチン購入資金が大量にアメリカに流れていることが原因でしょう。

日本だけでも恐らく数十兆円の資金がそれに費やされているはずです。

それが世界中となれば、どれほどの資金がアメリカに流れた事か。

 

ワクチン会社も、流入した資金を金融機関に預けているはずですから、その資金は世界に投資されているはずです。

それが今の世界経済の状況を生んでいる背景でしょう。

 

デフレ脱却と言っても、スタグフレーションを呼んだだけで、健全なインフレを呼んだとは言えません。

 

岸田総理は、ここを踏まえて財務省の反対を押し切り、大々的な公共投資を、特に公共事業で有効需要を補うべきです。

 

それこそが正しくデフレ脱却を図り、日本経済を浮揚させることにつながると思います。