【次期戦闘機】防衛省、開発スケジュールを自民党国防議員連盟に提示 | 朱雀ひのでのブログ

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次期戦闘機の開発スケジュールが、自民党国防議員らに提示される

 

一昨日(7日)に、自民党国防議員連盟の会合で、防衛省の担当者が航空自衛隊のF2戦闘機の後継機(次期戦闘機)の開発スケジュール案を提示したと報じられました

(リンク切れの際は、注目記事1415参照)

 

それによると、このようなスケジュール(と開発方針)になるようです。

 

1.今年度、大まかなコンセプトを決める構想設計に着手

2.共同開発国(企業)の選定とその枠組みを、来年度予算案が閣議決定される今年の年末までに決定する

3.来年3月末までに機体全体の設計を担当する国内企業の選定と契約を行い、来年(2021年)度から、本格開発を行う

4.今のところ、米軍とのインターオペラビリティ(相互運用性)のシステム構築は米国の協力を受け、エンジン開発は英国との協力を視野に入れている

5.令和6(2024)年度に試作機の製造開始予定

6.試作機の飛行試験などを経て、令和13(2031)年度に量産態勢に入る

7.F2が退役時期を迎える、令和17(2035)年度の配備開始を目指す

8.防衛省は次期戦闘機の主任務を敵戦闘機との空中戦など空対空戦闘とする方針

 

防衛省による次期戦闘機の想像図

 

 

既にステルス戦闘機を独自に作れるだけの技術を持っていた日本

 

4年後に試作機の製造に入るという事は、来年度から本格開発を開始して2、3年で試作まで持ち込むという事です。

そういう芸当は、開発に必要な要素技術が現時点で出そろっていなければ、まず無理なスケジュールなはずです。

 

それについて「ヒゲの隊長」、参議院議員・佐藤正久氏のブログ記事に公開されていた表を、以下に書き直して提示します。

 

 

これを見ると、ほとんどが国内開発できるとありますね。

出来ないと書かれているのは、射出座席(戦闘機が飛行中に操縦不能などになってパイロットが緊急脱出するための機能が付いた座席)とインターオペラビリティ(相互運用性)だけですね。

 

 

アメリカに支援を受ける部分は、データリンクや相互通信の互換ソフト等に留まるか?

 

射出座席については、開発しようと思えば出来なくはないでしょうが、既に技術として完成しているもので、特別に機密性の高いものではありません。

アメリカ、イギリスどちらの防衛企業から購入しても、ブラックボックスが付けられるような類のものではないので、部品として調達すればいいことです。

これについては戦闘機開発や生産時に、特に問題が生じる類のものではないと思います。

 

インターオペラビリティ(相互運用性)については、米軍とリンクして戦うことが前提ですので、日本だけで開発することは、技術以前の問題で、出来ません。

米軍機や友軍機とのデータリンク、相互通信、そして米国製、欧州製武器操作ソフト等は、向こう側のソフトウェアとの互換ソフトが必要です。

 

パスワードや暗号通信等のやり取りは、(ソフトウェア提供などの)米国などの協力なしでは、不可能です。

これは国内開発を考えるだけ無駄で、情報提供料として、アメリカには協力を求めることは、不可欠です。

 

アメリカから導入するのが、情報のやり取りをする互換ソフトと共通暗号等に限定できるといいですね。

戦闘機を操作するアビオニクスまで任せてしまうと、ブラックボックスを押し付けられたり、バックドア等を仕掛けられるかもしれませんから。

開発が大変でも、アビオニクスは独自開発をお願いしたいところです。

 

 

やはり十分な技術を持つと、交渉力も強くなる

 

ただ、それ以外、エンジン、ステルス技術や各種センサー技術、ネットワーク戦闘技術など、次世代戦闘機に不可欠な技術は、すべて国内開発が可能とあるのは、凄いことです。

少なくとも戦闘機として形作ることは出来ると断言しているも、同然です。

 

そしてその部分に共同開発の余地はあるようですが、その条件が、こう書かれています。

 

コスト低減や技術的信頼性向上のために国際協力を得る場合であっても、必要な技術が開示されること及び他国に左右されない権利我が国が保持することが前提

 

 

つまり国内開発できる部分について国際協力を得るとしても、それはコスト低減や技術的信頼性向上のためであって、それにつながらないなら共同開発しないと言っているのです。

 

またその目的に合致するとしても、それに必要な技術を日本に開示すること、そしてその利用について、他国に左右されず、日本が自由に使える権利を日本が持てないなら、やはり協力は求めないと言っているのです。

 

F2開発の時と違い、相当強気な姿勢でいるようですね。

 

そして米英が日本の次期戦闘機開発に秋波を送る理由も、見えてきました。

 

・戦闘機開発に共同開発国として入り込んで、日本の技術を得たい。

・高性能な戦闘機が出来上がった暁には、生産面でも分担して儲けたい。

・もし自国に導入する場合は、パテント料を上乗せせず、ブラックボックスなしで導入したい。

 

このあたりでしょう。

 

 

イギリスの技術を取り入れられれば、敵により探知されにくく、エンジンのコンパクト化が図れるが、ビジネスライクの交渉で臨める範囲

 

ただ疑問に感じられる点は、あります。

既にF22戦闘機搭載エンジンと同等の推力を発揮するエンジンを持ったにもかかわらず、なぜイギリスと、共同開発を視野に入れているのか?

 

これについては、こちらの方のブログ記事で解説されています。

 

XF9-1試作エンジンの構造/出典:防衛装備庁

 

それによると、イギリスの「リアクション・エンジン」社が開発した革命的な冷却装置「プリ・クーラー」という技術が戦闘機のエンジンに使用できないか研究中だそうです。

 

なんと1,000度に達する高温の空気を1/100秒で-150度Cまで冷却可能だそうです。

理論上は、M5.5の極超音速で飛行中でも、エンジンの過剰加熱を防ぐ事ができるのだとか。

 

実際に昨年、リアクション・エンジンと米国国防高等研究計画局(DARPA)は実際にM5.5の極超音速域=1,000度に達する高温の空気を「プリ・クーラー」で冷却できるのかを確認するため共同で実験を行い、設計通りの性能が発揮されることが確認されたそうです。

 

この技術を次期戦闘機のエンジンに活用できれば、熱源に反応する赤外線探知レーダーからも『ステルス化』出来ることになり、より敵戦闘機に発見されにくくなります。

 

レーダには映りにくいとさせるステルス機も、ジェットエンジンの高温の排熱を出すのは、現状、避けられません。

そのため多くの地/艦/空対空ミサイルは、最終誘導を赤外線探知で目標を追うようになっており、これがステルス化の泣き所でしたが、それすらも克服できるようになるのかもしれません。

上手くいけば次期戦闘機は、目視できる距離まで接近されなければ、撃墜不能になるかもしれません。

(さすがに目視できれば、バルカン砲が撃てる)

 

それだけではありません。

 

それよりは地味なことですが、「ロールス・ロイス」社は、戦闘機の電力を発生、供給するためのスタータ・ジェネレーターを、エンジンの外部に取り付けるのではなく、エンジンのコア部分に組み込む技術を開発したと、アナウンスされています。

この技術を利用できれば、次期戦闘機のエンジンはさらにスリムになることになり、戦闘機設計の自由度がさらに増すことになります。

とても有用な技術ですね。

 

 

これだけ揃えば、パテント料の相互支払、自国使用分生産権付与で交渉は成立できるはず

 

ただこれだけ戦闘機の要素を国内開発できる状況ならば、F2開発の時のように、技術を無償で提供するいわれはないですね。

そのような不利な契約をする必要性は、まったくありません。

 

仮に共同開発国がアメリカやイギリスになるとしたのなら、ビジネスライクで交渉すればいいのです。

先に紹介したイギリスの技術は有用ですが、無くても戦闘機開発が出来ないわけではありません。

パテント料交渉や技術提供交渉で済む範囲のことでしょう。

日本が出す条件を呑まないなら、無理に提供してもらわなくて結構だという姿勢で臨めばいいと思います。

 

・次期戦闘機についてのすべての権利は、日本に属し、生産、改造、輸出等は自由に行える。

・それぞれの技術供与には、常識的なパテント料を取り決め、生産やメンテナンス、改造などでは、相互に正規で支払う。

・提供技術の無断提供は、相互に認めない。

・共同開発国の自国使用分については、生産権を得られる。

 

ここから1ミリたりとも譲るべきではありませんし、その必要性も、無いですね。

この線に沿って交渉しているようですし、今のところ安心できます。