昔の株取引と現在では随分様変わりしたように思うが、こんな感じだと思う。

40年位前の株取引

結構のんびりしていて、今のようなインターネットで分単位、秒単位で株価をおいかけることはなかった。

注文も、証券会社に電話するのが最速で、当時ファミコントレードというのが大和証券で出だしたように、ネットにつなぐ取引が真新しかった。そもそもインターネットが家庭に普及するのはまだしばらく先の時代。つないでもMODEMとかISDNなど。

株を買ってみようかと思う一般庶民は、通常は証券会社まで行って、いろいろ面倒な紙を書いて印鑑を押さされて、口座を作ってもらい、それからやっと注文ができた。

40年前(=1983年)、時代はいわゆるバブル期。株で大儲け!みたいな話も聞かれたが、当時私は新卒サラリーマンで、まったくバブルの恩恵には無縁の世界。結構ハードルが高かった。

  • 最低単位が1000株50円額面のものが主流だったので、株価が300円程度のものでも、30万円, 1000円台だと100万円以上が必要。「NTTのような1株308万円!」などは、とても新しかった。(その後200万円台まで落ちて、どうなったことやら)
  • 現物取引が主流で、「買い」についても、「売り」についても、とてもペースが遅い。特に当時は、株主優待を受けたい場合にのみ実施していたとはいえ、名義変更という手続きがあり、500円で何週間かかかる(大口、お得意様は別だが、単位株庶民は2~3週間かかることもざら)。
  • 現物株を買う時は、注文時に相応額を入金させられるケースもあり、でも決済期限の4日後まで自分の株にはならない。その間、当時は売ることができなかった。また手数料はとても高く単位株をやっと買っても、株価が5%程度上がった程度では、赤字。20%とか30%上がらない限り庶民は利益など期待できない
  • 現物株を売る時も、約定して直ぐに現金になるわけではなくて、4日後、源泉税、手数料(往復でそれぞれかかる)が引かれた後、証券会社の口座に積まれる。それを引き出して銀行口座に入れるには、窓口まで行って手続きして、2日~3日後やっと入金

それでも、当時はバブルがはじけるまでは多くの人が参加し、儲かった(損をした)らしい。

でもやっと単位株を買える程度(それでも数十万円も必要だった。当時の手取りの数か月分)では10%あがったって、大した利益にはならず、往復の手数料などで消えていく。ましてや、バブルにあやかれない薄給の新人サラリーマンには、単位株が買える銘柄さえ限られ雲の上の世界の話であった。(その代わりバブルが崩壊しても、当時は普通のサラリーマンでほとんど影響もなく、精々昇給率が悪いなぁ。。程度で済んだのだが・・・一万円タクシーがTVでよく言われるが、500円だって当時はタクシーはありえず、電車か徒歩)

現物株というのは、その流れで現在に至っても結構制限が多い。

 

現在の現物株

注文もネットやスマホからポンポンいれることができるし、リアルタイムで株価もわかる。口座開設など、ものの1分でいつでもできてしまったりする。

  • ミニ株のようなものも増えて、単位株にならなくても積み立てていったり端数株を買い取ってもらったりなどで取引できるなど、株売買のハードルはさがった。(社員持ち株会のようなものでは以前よりあったとはいえ、限定的)
  • 名義変更の手続きが実質無くなり、買った日から「株主」になれる(正確ではないが目的的には達成できている)。手数料もない。だから権利確定の直前に買っても株主優待が受けられる
    • 平成21年1月5日より株券が電子化され、権利確定日に証券会社から発行会社へ株主通知を行われる。自動的に株主優待や配当金等の権利を受けることができるようになっている。
  • 現物取引の決済は相変わらず遅いが、1往復だけなら当日売ることも可能になった。2往復目はだめ。

『差金決済取引(さきんけっさいとりひき)』

差金決済取引とは、「株券の受け渡しを行わずに、売りと買いの差額を相殺する取引」

現物取引の場合、「同一資金」「同一銘柄」の取引は1日1回転のみ可能。 「同一資金」「同一銘柄」の1日1回転を超える現物取引は、金融商品取引法の差金決済取引の禁止

同一日同一銘柄の株式「買い1,000株→売り1,000株→買い1,000 株」のケースでは、2,000株分の買付代金があれば、注文は可能。しかし、1,000株分の買付代金しかないのであれば、2回目の買付は、買付代金の二重使用として差金決済取引に該当

  • 現物株を売った場合、残金相当分(売買代金から諸費用を引いた残り)が証券会社では、そのまま次の取引きに使用できたり、銀行に出金指示をすることで、翌営業日~2日程度でお金が使えるようになる。

と、随分変わっている。それでも、現物株の場合、「現金」は購入する株の分だけ必要で、いくら時代が変わったとはいえ、これはかわらない。

500万円分の株が欲しい人は500万円+手数料が必要。現物株の手数料は相変わらず必要。

ここで、登場してくる不思議な、信用取引。急に世界が広がる。差金決済取引ではないらしい。法律は権力者達のためにあることを忘れてはいけない。彼らのルールで、目立たないように生きていく方法をさがさねばならない。

 

現在の信用取引

  • 単位株の取引きはしないとならないとはいえ、ざっくり預けたお金や、株券評価額(いろいろで60%~70%)の3倍程度が信用枠内となり、その範囲で売買できる。だから100万円の株を買えない人でも40万円くらい預けておけば、100万円分の株が買える(正確には違うが、”売れる”という点からみれば"買った"と同じ)。むろん、この段階では株主になっているわけではない。
  • ペースの速い取引が可能で、信用買いできた瞬間に決済売りに出すことができる(逆もあり)。最近の高速取引を見ていると5分程度で3%程度株価が上下することは決して少なくない。寄り付きの30分、引け前の10分など、大きく株価が暴れる瞬間だけ参加していると、高確率で差額が生まれやすい。お金を引き出さないのであれば、即日それが信用枠増加分になる(減る)ので再度売買に使える。
  • 信用取引は現物と違って、何往復もできる。ただ、信用買いと信用売り、決済買い、決済売りの出し方では禁止になるケースがある。つまり、買いをだしつつ、それより安い値段で売りをだすなど。
    • 「他の投資家を誤解させることを目的とした、実質的に権利の移転を伴わない有価証券の売買(=仮装売買)」
    • ある特定の株式の売買が繁盛に行われていると他の投資家に誤解させ、取引を誘引することを目的として、知り合い同士の売主と買主があらかじめ約束したうえで、同じ時期に同じ価格で売買注文を行う取引(=馴合売買)」
    • ある特定の株式の終値を高く又は安くすることを目的として、立会終了間際の発注において、直近価格よりも高い又は安い価格で終値を形成させる取引のことをいいます。また、単独の約定で直前価格より高い価格で終値を形成するような買い上がり形態(=終値一文高
    • ある特定の株式の価格を意図的に高く又は安くする事で、あたかも相場が上昇又は下降していると他の投資家に誤解させ、取引を誘引することを目的とする行為(=買い上がり(売り崩し)
      ※買い上がり(売り崩し)傾向が見られない場合でも、複数営業日に渡って連続して終値に関与する約定については、終値関与の疑いが生じる可能性あり。
    • 他の投資家の取引を誘引する目的がなかったとしても、取引の状況からみて実勢を反映しない相場を作為的に形成したものと客観的に認められる取引(=作為的相場形成
    • 上記は忙しくなると稀に偶然そうなることもあるが、システムで入力できなくなっていることもあって、それほど普通に売買するうえでは問題にならない。株数と取引価格を間違って入れてしまうと、あっという間にそれで成立してしまうこともあり(以前、そういう事故をTVで紹介されていた。もっとも上限、下限の額は決まっているからあまり頻繁にはないと思うが、ある時にはあるらしい)。自己責任とはいえ、厳しい世界であることには変わりない。
  • ちなみに、信用買いしても、その段階では株主ではないので、優待等は受けられない。それでも、配当については、稀に、案分して入金されるケースもある。加えて、手数料とは別に「信用買いは現金を借りて株を買っている」、「信用売りは株を借りて株を売っている」状態なので、お金に関しては金利、株に関しては借り株料が発生する。これは信用取引と現物取引の違いで、信用取引は長期保有すべきものではない。早期に現物分の現金を入れて、現物の購入(現引き)をするなり、決済売りをする、信用売りの場合は、現物株を持っている場合にはそれを引き渡して信用売り時の売却価格で売ったことにする(現物渡し)なり、決済買いを早くしたほうが、金利・借株料は少なくなる。また、信用売買は、一般的に(感覚的には逆になるが制度信用取引と呼ばれる)6か月以内に決済しないとならない。最近は無期限の決済(同上で、一般信用取引)の証券会社もあり、これはいいが、期間による金利は結構な額になるから早期に決済できるにこしたことはない。
  • 現物取引と違うのことの一つに、株を持っていなくても、信用売りができるので、暴落時などでも下がるとわかっているのであれば、早めに(遅くとも売買停止になる前に)、売っておいて、下がってから買い(決済買い)戻すことで利益を得られる。もっとも、逆に上がってしまうと、下がる分には0までだが、上がる場合には青天井で上がるから、大変なことになる。
  • 加えて、与信枠を維持しないとならず、株が既定の範囲(与信枠)を超えて値下がってしまうと、「強制決済」とか「追証」というものが発生する。追証とは、担保の値下がりで、担保(保証金)率が一定の比率(最低維持率)を下回った場合、定められた期日までに追加で担保(保証金)を預け入れる必要がある。 これが追加保証金。これも、怖い。
    • 例えば現物株を1000万円(仮に500株とする)持っていて、これの60%が信用枠となっている場合、さらに、1000x60%x3=1800万円(同900株)までの信用取引ができる。ここで、同じ株を1800万円(900株)分信用買いしたとする。株価が半分になると担保価値は500x60%x3=900万円(500株)に減ってしまい、明らかに信用買い分の1800万円には保証力不足。借りているお金が1800万円なので、決済(現引き)するには1800万円払う必要がある。現物株を売っても500万円にしかならず、残りの1300万円不足。もう一つは現物株はそのまま900万円分の与信枠として残し、現金300万円(100%で評価されるので3倍の効果->900/3=300万円)を「追証」としていれて、与信枠を回復して、継続する方法を選ぶことになるが、いずれにしても、ものすごいお金が必要になる。

この最後のケースが信用取引は怖いという話になるが、リスク管理のできる人がやる場合には、メリットも多いだけに、悩ましい。例えば信用売りは現物までとか、同じ銘柄を信用と現物で持たないとか、信用とはいえ、現金(保証金)分までにするなどで、即時売買のメリットは得られる。しかし、反面、もう一つのメリットのレバレッジが使えるのに使わないことになる。人間なのでつい、買える(売れる)分まで売ってしまうというところがあり・・・人を選らぶ方法だと思う。

 

最近の信用取引は証券会社、取引量によって多少の違いはあるが、主流は手数料無料化で、これも大きなメリット。現物だと単位株近辺の取引きでは10%以上価格差を出さないと得られなかった利益が数%でも得られるようになる。またレバレッジを使ったり、単位株の10倍とか20倍の十分大きな取引であれば2%程度の変動でも利益が得られ、デイトレードなどが成立する。これが、ギャンブルチックな誘惑となり。。。ここをどう抑えるかが問題。

 

どうしても、信用取引には「天国と地獄の2極化」、もしくは「上空30mを綱渡り(平均台でもいい)」的な要素がある。

そうは言っても、毎日、現金を得ていくには、信用取引による清算後の実現利益(口座にある現金)は、含み益(実体が無い計算上の利益)よりもはるかに役に立つことになる。

 

「向こうに渡らないとならない橋」もあるわけで、選択枝としては残しておくべきなのかもしれない。

 

信用取引で利益を得ていくには、現物株以上に、時間軸とタイミングが難しい。

一方、同じお金で、

現物を買っておき(長期保有、株主優待で楽しむ。現物だけだとここまで)、

それを担保に、信用取引で株がさらに買える(売れる)ことになるから、

さらに追及していきたいと思った。

また株価が下がる時にも利益を得られるという点は結構な違いを生む。

 

今後、信用取引で売買するタイミングとディトレードのリスクについて考察する予定。