「植物と環境への適応 その1」

 私たちの周囲では、ますます海外との接触が多くなり、「国際化」という言葉も近頃では当たり前、となってきています。たとえ、生まれ育った地域に住んでいて、海外に行くことがないにしても、世界とのつながりは避けられません。このようなことからも、次の話は、植物だけに止まらず人間世界にも関係するヒントが含まれています。

 プロテアという花があります。見たことのある方も多いと思いますが、パリパリとプラスチックのような蝕感の花で、切り花として出回っています。南アフリカの植物ですが、気候のよく似たオーストラリアで栽培されて日本へ輸出されてくるのです。私は、ストレリチアの自生調査の時、この花に出会い、その有用さに気づいて、種子を手に入れては、何回もテストを繰り返してきました。

 ストレリチアの自生地の隣の地域の産ですから、似たような環境条件なので、日本でも十分に育つものと思ったのです。ところが、いざ手がけてみると、どうにもならないのです。何回、繰り返しても育ってくれません。原因は、日本の夏の蒸し暑さにありました。細かく言えば、夜になっても気温が下がらない、こともあったかもしれません。これには、お手上げでした。冬の寒さに弱い熱帯植物なら、暖房すればよいのですが、夏の蒸し暑さに耐えられない、とあっては、大変な施設が必要になってしまいます。これが植物栽培では割に合いません。冬はなんとか越せるのに、普通なら楽であるはずの夏になると枯れてしまうのです。

 私は、無念さ胸に栽培をあきらめました。その後、伊豆で育った、と聞いたことがありましたが、どうも続かなかったようです。