Vol.12「ソウトパン・バーグ」

 翌朝、外へ出ると、両方に美しい緑色の山並みが横たわり、朝日は輝いているのが見えます。これが目的地のソウトパン・バーグだということでした。

ジョバート氏によると、山中に岩と塩の凹地があるための命名とか、ああ、英語のソルトか、と納得しました。案内役の農場主任、アルバート氏の運転するランド・クルーザーで出発です。山道にさしかかった辺りにゲートがあり、ここの森林事務所に挨拶し、入山許可を受けました。

南アフリカでは、私有地は勿論、国有地でも、無断に入ることは許されないことが多いのです。だから、外国人が自分ひとりで自生地を探そう、などと考えるのは、無謀以外の何ものでもありません。

 

 曲がりくねった山道の周囲には、一面ユーカリが植林されています。その次がマホガニー、そして、最も高い標高の所にはマツが植えられています。宿舎から眺めた時には、自然林そのものに見えたのに、実は人工林だったのです。

 

 何度も道に迷った末、ようやく、頂上近くの植林には使えない小さな谷間にたどり着きました。小さな流れの両岸に、3mも超す高さのコウダータが点々と散花しています。濃い霧が押し寄せてきて風景がかすみ、いかにも深山らしい雰囲気の中で、いつのまにか私は、ストレリチアと一体になっていました。

 

 1時間ほどで調査を終え、頂上へ登って3人でランチを広げました。食後、周囲を散策していると、岩に囲まれた凹地で3人の黒人が、たき火を囲んでいるのが見えたので、近寄って、何をしているのかと尋ねますと、山火事の見張りだ、とのこと。ここが山脈の中でも一番、高く、見晴らしのよいところなのでしょう。

 彼等は生肉を小刀で切り取って、たき火の上に吊るした縄に、はさみつけているのです。つまり、クドリ(大型カモシカ)の干し肉を作っていたのです。これは南アフリカでは珍味とされています。