イヌカタヒバは南方系の植物で、環境省の絶滅危惧種に選定されている。
しかし、人家周辺では栽培からの逸出個体がたくさん見られる。
関東周辺で、人家周辺に生えているカタヒバはほぼイヌカタヒバと考えられる。
一方、カタヒバは山地の渓流沿いの岩場などに生育している。
イヌカタヒバとカタヒバを区別する最大の特徴は、殖芽の有無である。
枝先に淡褐色の殖芽を着けていれば、イヌカタヒバである。カタヒバは殖芽を着けない。殖芽を着ける特徴が、分布の拡大に大きく影響していると考えられる。殖芽を着けるのは秋なので、今は一番識別しやすい時期である。ある程度大きな個体なら、普通殖芽を着けている。殖芽は胞子嚢穂にやや似ているが、大きさや色が全く異なり、殖芽は簡単に分離する。
それでは、殖芽がない場合はどうすればいいのか。
よく言われているのが、葉のへりに透明部分が目立ち、背葉(小さい方)の葉先が芒状に尖っていればイヌカタヒバ、透明部分がないか不明瞭で、背葉の葉先が鋭頭程度であればカタヒバ。ただし、この特徴は決定打にはならない。
そのほか、カタヒバの背葉は盛り上がり、イヌカタヒバはぴったりくっついているように見えるとかいわれている。
大きさは、全体的にイヌカタヒバの方が小さいように感じるが、大きく育っているものもある。
イヌカタヒバ。枝先に殖芽をたくさん着けている。真っ赤に紅葉している個体もよく見る。
イヌカタヒバの枝先の殖芽。秋なら大概着けている。
イヌカタヒバ。殖芽のほかに、胞子嚢穂も着けている。胞子嚢穂は全体の中心付近に着き、長い。
イヌカタヒバの葉縁は透明で、背葉の先は芒状に尖っている。
イヌカタヒバ。同上。
カタヒバの中程度の個体。殖芽を着けていない。葉の混み具合も違うか。
カタヒバは枝先に胞子嚢穂を着ける。
カタヒバの背葉は普通芒状に尖らない。
カタヒバの背葉は盛り上がってみえるらしいが、どうだろうか。
カタヒバを裏から見たところ。枝先に胞子嚢穂が着いている。