サビ猫ちょび2 | スタミナ源たれのブログ

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朝方うちに初めてやって来た時のちょびは、身体は小さい子猫なのに、他の大人の猫達相手に堂々とうなり声をあげて威嚇した。そのギャップに驚いたのか、泊まっていたもーちゃんもとらも出て行ってしまったほどだ。
この寒さに加え、小さいちょびはご飯にも上手くありつけず飢えていたのだろう、生きるか死ぬかの瀬戸際なのだから気迫が違う。
しかし、さて、どうしたものか。この小さい子猫を締め出すのは気がひけるが、俺は仕事に行かなければならない。
最初はちょびを飼う気は無かった。今なら野良猫に安易にご飯をあげるべきではないとわかっているが、当時は何の気無しに猫達と戯れていたいだけで、特定の猫の面倒をみて、生死に責任を持つということは考えていなかった。第一うちはアパートなのだ。
可哀相だが外に出しサッシを締め、気になりながらも外を見ないように仕事に行った。

そして夕方仕事を終えて帰宅すると、驚いたことにちょびはアパートの洗濯場の「燦太のケージ」の横にいた、俺の帰宅を待っていたかのように。
寒さをしのぐ為かもしれない、疲労で寝ていたのかもしれない、しかし可哀相に思いながらも、心のどこかで「あんな小さな子猫だから、もうどこかに行ってしまっただろう」と考えていたから驚いた。

燦太(さんた)とは、俺が益田に住んでいた頃に飼っていたちょびの先代のペットで、クリスマス近くに冬のボーナスで飼った、オスのプレーリードッグのことだ。
燦太は地元を離れて一人でいた淋しさを紛らわしてくれた、俺がご飯を食べると燦太も食べた、俺がくしゃみをすると燦太もいなないた、俺が寝るときは一緒にベッドで寝た、朝になると燦太は自分でケージに帰り、仕事に行く俺を見送ってくれた。
そんな燦太も、大田に連れ帰りしばらくたった後、癌で死んでしまった。
死んだのは俺の休みの日だった、もう意識も朦朧としている燦太だったが、なぜかその時、俺の休みまで頑張ってくれたような気がしてならなかった。

そんな燦太のケージをなんとなく片付けられないで置いていたのだが、そのケージの横にうずくまり俺を待っていたちょびを見て、まるで燦太が「ここで待ってな、ここの人が良くしてくれるから」とちょびを引き止めていたような気がした。
俺はちょびをつまみ上げ、家に入れてやった。
(続く)