私(母)


朝 宿泊してるホテルの下の

お店でカステラのように甘い

素朴なパンを買って

「おやつにしよう」と

息子のナイキの

子供用リュックに入れた。

電車に乗って バスに乗って

降りて歩いて歩いて

やっとその広場に着いたら

たくさんの鳩がいた。

幼い息子はたくさんの鳩を見て

怖がった。

私も怖かった。そのくらい

たくさんいた。


観光客達がエサをあげると

ザーザーとエサの方へ

鳩の群れが移動していく。

鳩の群れがいないところを

選んで歩いた。

広い広場の周囲の

ところどころに置いてある

空いていたベンチに

息子と座った。

青い海 青い空

たくさんの鳩 大勢の観光客

息子と眺めていた。

時々ベンチの近くまで

鳩の群れがくると

息子は怖い怖いと言っていた。

そう言いながらも、こんなにたくさんの鳩を見るのは初めてで

青い海より鳩の群れを

息子はずっと見てた。

しばらくベンチに座っていた息子は、観光客が投げたエサを追う鳩の群れを追うようにして

歩き出した。

息子は鳩の群れの後ろを

ずっと歩いていた。

私はそれをベンチから眺めてた。


サマータイムだったから明るくても夜に近づいてきた。

いつの間にか息子は、

ピンク色の服を着た女の子と

鳩の群れの後ろを

一緒に歩いていた。

ピンク色の服を着た女の子と息子は、向こうのベンチでひとりで座っているおじいさんの

手のひらから

鳩のエサを分けてもらっている。

ふたりでおじいさんの座るベンチに近づき

おじいさんの手のひらから

小さな手を伸ばしエサをつまんで

ジャンプするようにして投げている。鳩は相変わらずエサに向かい

ザーザーと群れで動いていた。


時々ピンク色の服の女の子が

振り返って見るあちらの方のベンチでひとりで座る女性が

あの子のお母さんなんだろう。


ピンク色の服の女の子と息子は

何時間も鳩の群れを追いかけて歩いてた。

おじいさん 

ピンク色の服の女の子のお母さん

私は

それぞれベンチで何時間も

ひなたぼっこ。

私は青い海 青い空 ピンク色の服の女の子といる息子を眺め続けた。


少しずつ暗くなって

本当に夜になって

ベンチにはおじいさん

ピンク色の服の女の子のお母さん

それと私しかいなくなった。

広場には何人かの観光客と

ピンク色の服の女の子と息子

くらいしかいなくなってきた。

さっきまでは人混みでわからなかったけど、ベンチが広場の周囲には思うより多く置いてあった。

長い時間飛行機に乗って

ここまで来て

広場のベンチで

1日中ひなたぼっこして

息子は鳩を追いかけて歩いていて。


のどかであったかかった。