赤い波 | この美しき瑞穂の国

赤い波

6月24日の夕方以降、広島では激しい雨が降った影響でこの日マツダズームズームスタジアムで行なわれた広島阪神戦のナイターが試合途中で中断し、しばらく様子見するも結局試合中止となった。


その影響で野球観戦に訪れていたカープファンがスタジアムからぞろぞろと出てきて街中はあっという間に真っ赤に染まった。


広島では老若男女問わず様々な人々がカープの帽子やカープのユニフォーム風Tシャツ等を着て歩く光景は決して珍しくない。年配の女性がカープキャップを被る姿も様になっており、広島の人々のカープ愛の強さはなんとも微笑ましく思う。


そんなカープファンの群れをホテルの窓から眺めていたら、まるで赤い波のようだなと思った。


播磨国風土記(はりまのくにふどき)によると、神功皇后は三韓征伐に際して邇保都姫(にほつひめ)という女神の神託を受けたという。


その内容は、よろしく我を治め祀れば善き験をいだそうというもので、比々良木八尋桙根底不附国(ひひらぎのやひろほこねのそこつかぬくに)、越売眉引国(をとめのまよひきのくに)、玉匣賀々益国(たまくしげかがやくくに)、苫尻有宝白衾新羅国(こもまくらたからあるたくふさましらぎのくに)には丹の波によりて平らげるべしとお告げしたという。


このお告げにより神功皇后は赤土(丹)を得て、軍船や兵士の軍装、船の前と後ろに立てる鉾に丹を塗った赤備えで出陣したという。


そして海に赤土を撒き、赤い波を起こしながら航行すると鳥も魚も軍船を避けて航行を邪魔することがなかったという。

カープレッドの装いで広島の街を歩くカープファンの群れは正に赤い波だったなと感じて一人ほくそ笑んだ。


そして突然の雨によるこの赤い人の波は邇保都姫のお示しだと思うのであった。