ふと思い出したこと | この美しき瑞穂の国

ふと思い出したこと

以前書いたことがあると思うのだが、己がお経等を覚えたりあちこち旅をするきっかけとなった出来事を改めて書こう。それは今日、なぜかその時のことをふと思い出したからである。



僕はかつて仕事で群馬県に三ヶ月間赴任していたことがある。ここで過ごした三ヶ月間はその後の自身の生き方に大きな影響を与えたと思う。



その当時の僕は車の免許を持っておらず、今のように旅をすることも無い、どちらかといえばインドアの人間だった。


群馬に赴任した当初、寮の用意が間に合わず仮の寮として二週間だけ民間のアパートで暮らした時期があるのだが、その初日の夜に不思議な出来事に遭った。


僕は部屋で寝ていたのだが突如金縛りに襲われた。そして寝ている僕の右側のほうから『ミシッ、ミシッ。』と畳を歩く足音が聞こえた。しかし目を開けても足音の主の姿は見えない。


その足音はゆっくりと僕の布団へと近づいてきて、やがて見えない何かが布団の中にもぐり込んできた。そしてそれは僕の腕や足に絡みついてきたのである。



その見えない存在に僕は恐怖を覚え、叫んで隣室の同僚に助けを求めようとしたが、全く声が出なかった。金縛りの最中は声が出せないのである。


それでも何とかこの状態から脱するべく、渾身の力を振り絞って寝返りを打った(※当時、金縛りの際には寝返りを打つと解けたため)。


すると金縛りが解けて目が覚めた。この霊体験はとても怖かったので、その後は照明を付けたまま寝たのであった。


そして翌日、同僚たちに前夜の体験を話すと『あの日の思い出か(笑)』と茶化す人がいる中で、ある霊感のある同僚が真剣に話を聞いてくれた。そしてその同僚は僕に般若心経と盛り塩を奨めてくれた。



その日以来、僕は必死に般若心経を暗記してすぐに暗唱出来るようになった。そしてその後は観音経の偈文も覚えたのである。



群馬へ共に赴任した同僚たちは皆仲が良く、時々皆で外食に出掛けたり、いつも僕の部屋に集まって皆でテレビゲームに興じたりしていたのだが、同僚の中でも年齢が倍以上の最年長の人が当時僕をとてもかわいがって下さった。


この人が休みのたびに僕をドライブに連れ出し、高崎観音、赤城山、榛名山等いろいろな所へ連れていってくれた。それは今でもいい思い出だ。


高崎観音に連れていってもらった際にはお土産として小さな高崎白衣観音の像を買って帰り、寮の机の上に置いて朝起きた直後と夜寝る前に毎日何気なく手を合わせるようになった。ちなみにこの白衣観音(びゃくえかんのん)像は今でも自宅で祀っている。



僕の地元は公共交通機関が発達しているので日常生活において車は必要無く、免許を取る必要性を感じなかったのだが、休日ドライブに連れていってもらううちに次第に自分も車が欲しくなった。


ゆえに赴任を終えて地元に帰った後に免許を取って車を買ったのであった。



そして地元に帰ってから観音様を祀る寺をお参りしたいと思い、当時の乏しい知識の中で見出だしたのが浅草寺であった。浅草寺は大好きだった漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』にたびたび登場していたので覚えていたのである。


浅草には中学の頃に社会見学で訪れたことがあるので浅草寺を訪れるのは初めてではなかったのだが、中学生の頃は寺に全く興味が無かったのでほとんど記憶になかった。


しかし浅草寺に再訪して感動し、なぜ今まで行かなかったのかと後悔した。以来浅草寺を頻繁にお参りするようになった。




そして浅草寺から更に神田明神、湯島天神、新宿の花園神社・・・と次第に行動範囲が拡がり、今では全国あちこちの神社仏閣に出没するようになったのである。


群馬で過ごした三ヶ月間は己を大きく変えたのである。人生の転機はどこに転がっているのか後にならないと分からないものだ。




初心忘るべからず・・・本日ふと思い出したことを改めて教訓として胸に刻もう。