吉祥天巡り(プロローグ) | この美しき瑞穂の国

吉祥天巡り(プロローグ)

2012年10月27日、28日に吉祥天を祀っている京都、奈良の寺院巡りをした。


これは当時が神無月だったからか、2012年10月7日に身延山に行った影響によるものか、仏教の護法神に想いを寄せたことによる。


仏教の護法神として帝釈天、毘沙門天、弁財天、大黒天、摩利支天、鬼子母神、吉祥天等が有名である。その中でも帝釈天、毘沙門天、弁財天、大黒天、摩利支天、鬼子母神を御本尊として祀る寺院や御堂はあちこちにあるが、吉祥天を単独で御本尊とする寺院を探してみると見当たらない。これはとても意外に感じられた。そこで吉祥天に強い興味を持った。



吉祥天とはヒンドゥー教の富・美・幸福の女神ラクシュミーであり、ヒンドゥー教の主神の一柱ヴィシュヌの妃とされる。


このラクシュミーが仏教に吉祥天として取り入れられると毘沙門天の妃とされ、十羅刹女(じゅうらせつにょ)と共に鬼子母神の娘とされた。


吉祥天は古くは弁財天と共に七福神に含まれ、貴族たちに信仰されていたが、時代が下るとその人気を弁財天に奪われてしまった。それゆえ吉祥天を単独で祀る寺院、御堂が見当たらないのかもしれない。


しかし色々調べてみると奈良の薬師寺では毎年1月1日から15日の修正会(しゅしょうえ)期間において吉祥天が薬師三尊像の御宝前に祀られ御本尊にされるということを知った。


余談だが吉祥天といえば、かつてある友人たちと東京都調布市の深大寺をお参りした時、友人の一人がある場所でこの辺りに吉祥天の気配を強く感じると言い出したことがある。そこでその付近にある蕎麦屋に入ると店の敷地内に小さなお社があった。そこでそのお社に祀られている神を店の方に伺うと吉祥天だと答えた。この時は本当に驚いた。友人の能力もさることながら吉祥天を単独で祀るところはあまりにも稀だからだ。なぜなら吉祥天は大抵、他の天部衆と共に祀られるか、もしくは仏尊や毘沙門天の脇侍として祀られるからだ。


そんな吉祥天を祀る寺院にお参りしてみたいと考えて2012年10月21日の晩からいろいろと調べ始めた。するとその翌朝、携帯電話のニュースで奈良県の興福寺仮金堂が3年ぶりに公開され、これまで国宝館に展示されていた鎌倉時代の大黒天立像と吉祥天倚像が仮金堂に配置されている姿が初公開されるという記事を見つけた。そして仮金堂は翌月25日まで公開されるということであった。


このあまりにもタイミングの良いニュースを見て是非行かねばならないと考え、すぐに旅の計画を立てた。


そして2012年10月27日、最初に京都府木津川市の小田原山浄瑠璃寺を訪れたのである。


(つづく)