バランス | この美しき瑞穂の国

バランス

現代人には様々なアレルギー症状に悩まされる人々がいる。食物アレルギー、花粉症、金属アレルギー等・・・人々を苦しめる様々なアレルギー症状は人間が生まれながらに持っている強力な免疫システムの誤作動によって起きている出来事だと考えられているようだ。


人間だけでなくあらゆる生物は自身の生命を危険から守るための免疫システムを持っている。それは主にダニやバイ菌、ウイルス等に対抗するためにあるのだが、現代の先進国では極度に清潔になりすぎたせいか本来免疫システムが力を発揮すべき機会が少なくなっているようだ。その代わりに特定の食物や花粉等を免疫システムが異物と誤って認識し、過剰に働いてしまう誤作動がアレルギー症状なのだそうだ。


アレルギー症状は先進国ほど起こりやすいといわれているが、これは病気の原因となる雑菌や害虫等を徹底的に排除して清潔になりすぎたからだと考えられるそうだ。


何かを排除するということは大きな偏りを作ることであり、それゆえに大きな反動が来るのだろう。これは人間の思想や生活習慣等にもいえることだと思う。



例えば肉食をすれば将来成人病になり、長生きが出来ないと考える人が肉食を断って完全菜食主義者になったとしよう。するとその人は肉を食べないと誓ったがゆえに肉を扱う食堂には入れなくなり、出された料理に肉を使用していないかいちいち確認しなければならなくなる。そして他人と食事をする機会には相手に気を遣わせることになるだろうし、他人に対して肉食の害を説くかもしれない。


そうなると当人だけでなく周りの人々もいろいろと窮屈に感じるだろうし、それはストレスの元にもなりかねない。もちろんアレルギーで食べられないという方の場合はやむを得ないことであり、とても気の毒なことなのだが・・・。



余談だが仏教の祖、お釈迦様がご在世の頃の仏教徒は完全菜食主義ではなく肉も食べていたといわれている。もちろん積極的に食べたわけではないが、出家した人々は生産活動が禁じられていたため、その食事は托鉢で在家の人々の食事の残り物を恵んで頂くものだったからである。そして出して頂いたものはどんな食べ物であれ食べなければならなかったという。しかし出された肉の元の動物が屠殺される場面を見た場合やその肉が自分のために屠殺されたと知った場合は食べてはならなかったそうだ。ちなみに仏教が肉食を禁止したのはお釈迦様が亡くなられてからずっと後のことらしい。



成人病の原因として肉食以外にも酒、タバコ等も元凶といわれているが、酒飲みや喫煙者でも長生きする人はいる。100歳過ぎても元気なある老婆の大好物が鶏唐揚げや焼き肉だという話もあるのだから、結局は自分の好みや体質に合うかどうかが大事なのだろう。もちろん過ぎたるは猶及ばざるが如しだが。



そう考えると人生はあまりいろいろな物事を排除しすぎないよう、朗らかに、穏やかに、極力普通に生きていくのが良いのかもしれない。