西国の旅(素盞鳴神社) | この美しき瑞穂の国

西国の旅(素盞鳴神社)

2010年8月19日夕方、広島県福山市の素盞鳴(すさのお)神社をお参りした。


最寄りのJR上戸手駅より徒歩5分ほどのところにある。

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素盞鳴神社は延喜式内社・須佐能袁能(すさのおの)神社の論社とされ、備後国一宮である。
(※同じ福山市にある吉備津神社も備後国一宮である。)


素盞鳴神社の境内は一宮らしく広いが、社殿は隅の方でこじんまりとしている。

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素盞鳴神社随神門。

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随神門手前に侍る愉快な狛犬たち。

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この狛犬たちを見た瞬間に思わず笑ってしまった。口を開けた阿形の狛犬は特に面白い!


境内を更に進むと神楽殿がある。

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神楽殿の手前には大銀杏がある。神楽殿の裏に拝殿および本殿がある。


素盞鳴神社拝殿。

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素盞鳴神社の御祭神は素盞鳴尊(すさのおのみこと)、稲田姫命(いなだひめのみこと)、八王子(やはしらのみこ:素盞鳴尊と稲田姫の間に生まれた八柱の御子神)。



素盞鳴神社の創建は天武天皇の時代(西暦600年代)とされる。奈良時代のはじめに編纂された備後国風土記に記載された疫隈(えくま)国社が当社だとされている。


備後国風土記に記されている蘇民将来伝説の縁の地が当社であるという。それ故かつては祇園社、天王社、江熊祇園牛頭天王社と称して牛頭天王(ごずてんのう)を祀っていた。

しかし明治時代の神仏分離令により、現在の神社名である素盞嗚神社に改名した。


素盞鳴神社本殿。

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素盞鳴神社の社伝によると、743年に吉備真備(きびのまきび)が唐より帰朝の際、備後国より牛頭天王の神霊を広峰山に勧請奉祀したのが現在の広峯神社だという。

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(2010年9月9日『西国の旅(広峯神社)』)


牛頭天王信仰が当社発祥なのだとしたら、牛窓海岸の辺りを経由して兵庫県の広峯山、そして京都の祇園へと伝わっていったのかもしれない。牛窓神社に残る住吉大神が牛を投げ飛ばした伝説は牛頭天王信仰が後に神功皇后信仰に取って変わられたことを暗示しているのかもしれない。

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(2010年9月19日『牛窓神社』)


素盞鳴神社拝殿前にて大祓詞を奏上し、牛頭天王の勢威が増して存分に力を振るわれますように祈願した。


本殿の隣には摂社蘇民神社、疱瘡(ほうそう)神社がある。

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蘇民神社の御祭神は蘇民将来(そみんしょうらい)、疱瘡神社の御祭神は比比羅木其花麻豆美神(ひひらぎのそのはなまづみのかみ)。


備後国風土記には蘇民将来の伝説がある。



昔々北海に住む武塔神(むとうしん:牛頭天王)が南海の龍王の娘の元に向かう途中、一夜の宿を求めて此の地で富み栄えていた巨旦将来(こたんしょうらい)の所へ行ったが断られた。

次に巨旦将来(こたんしょうらい)の兄で貧しい蘇民将来(そみんしょうらい)の家に一夜の宿を乞うと、快く宿を貸して粟飯で精一杯もてなした。


それから年を経て武塔神は八王子をつれて再び当地を訪れ、蘇民将来の家に立ち寄り

『吾は速須佐能神(はやすさのおのかみ)なり。もし後の世に疫病があれば、自分は蘇民将来の子孫であると名乗って茅の輪を腰に着けた者は免れることが出来るだろう。』


と告げた。この教えを守った蘇民将来は疫病を免れ、巨旦将来の一族は疫病により滅びたという。これが今に伝わる茅の輪くぐり神事の起こりとされている。


素盞鳴神社の境内は巨旦将来の邸宅跡だともいわれている。


この伝説では悪人とされている巨旦将来は岡山県辺りで信仰される金神(こんじん)信仰に深い関わりがあるようだ。



この日、福山市は日中気温38度を越える猛暑日だったようだが、僕が訪れた夕方は酷暑が和らぎ、境内は静かで穏やかだった。



そしてこの日、スペイン北部の闘牛場で18日夜に闘牛が観客席に乱入して大暴れし、観客ら40人が怪我をしたというニュースを知った。さしずめ闘牛にとっては『モーーッ!!怒ったぞー!!』と言ったところか。


近年スペインでは闘牛は残酷だとして禁止しようという動きが広がっているそうだ。このことから牛頭天王の勢いが感じられた。




素盞鳴神社を後にすると、この日は福山市に宿を取った。


(つづく)