乱歩、横溝、澁澤 | 斎藤英喜の 「ぶらぶら日記」

乱歩、横溝、澁澤

久しぶりに、最近読んだ本の話など。

このところ、立て続けて、ふたつの「評伝」を読みました。

 

・中川右介『江戸川乱歩と横溝正史』(集英社文庫)

乱歩と横溝をめぐる「空前の対比評伝」。食後とか仕事のあととかの読書時間に少しずつ読んでましたが、ほんとに面白かった。

 

ふたりの性格はまったく違うのに、互いに認め合い、よきライバルであること、しかし横溝は戦後にどんどん「名作」を書いたのに、乱歩のほうは、戦後は、結局、「本格推理」の小説は書けなくなってしまったこと(少年ものは書いた)など。

 

また作家たちの背後を支える出版社の動向、編集者たちの話、というのも面白い。

大正期のところは、いろいろと勉強になりました。

 

じつは乱歩は、それなりに代表作は読みましたが、横溝は初期の「鬼火」とか「蔵の中」しか読んでなかったので、はじめて金田一耕助の活躍する『本陣殺人事件』などを読みました。

う~~ん、これは僕の個人的感想ですが、やっぱり乱歩にはかなわないのでは。

 

もう一冊は、澁澤龍彦の評伝。

・磯崎純一『龍彦親王航海記』(白水社)

この本、出た時にすぐ買ったのに、ちょっと「厚さ」の圧倒されて、

ようやく最近読みました。500頁を超える本。でも、あっという間に読了。

 

とくに六十年代の異端、前衛芸術家たちの、ほんとに毎晩飲み歩いて、激論し、

取っ組み合いの喧嘩もしょっちゅうという時代と、

七十年代以降の「静寂」な澁澤の違いが面白い。

 

やはり六十年代とそれ以降の違いのきっかけは、

三島由紀夫の「死」が大きかった、というのは、なるほど。

 

この本、たんなる評伝を超えて、澁澤龍彦論としても、秀逸な一冊と思います。

 

ということで、入院後の本も、「本格推理もの」と澁澤関係のものをセレクトかな。

 

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写真は、いつまにか妻が撮った、書斎の本棚の一部。

おもに文学や宗教関係の棚ですね。

手前の絵は、シダネル。