古き言い伝えはまことであった
映画館で、ビデオで、DVDで、もう何度見たかわからないけれども…、
宮崎駿監督『風の谷のナウシカ』
二条の劇場での特別公開、観てきました。
いやはや、もう最初のタイトルシーン、メーヴェで空を飛行するナウシカが登場してきたところだけで、感動して、うるうる…。
そしてユパさま、ミトじい、クシャナ、クロトワ、巨神兵…の懐かしい面々と再会し、
最後のクライマックス、大ババさまが、かっと目を見開き
「その者、青き衣をまといて、金色の野に降り立つべし…」と唱え、
「おぉ、古き言い伝えはまことであった…」と語るシーンで、もはや涙は止まらない。
終っても、もう恥ずかしくて、すぐに立てないのでした(笑)。
あらためてこの作品には「神話を生きる」という、メッセージがあふれていることを再認識しました。
神話を研究するものにとっては、まさしく古典的名作ですね。
そういえば、僕の最初の新書本『読み替えられた日本神話』(講談社現代新書・2006)では、アニメ版『ナウシカ』と、コミック版『ナウシカ』の比較考察をしています。
一般には、アニメ版は、神話の「安易なご都合主義」「予定調和」。
その「神話」から脱却して、神話を相対化したのがコミック版、という批評があります。「神話」は否定的に捉えられています。
しかし僕の考察では、アニメ版の「神話」を読み替えて、「神話」を宗教的個人の神秘体験のビジョンへと昇華させたのがコミック版『ナウシカ』であると論じたのでした。
ようするにコミック版『ナウシカ』は、アニメ版=古代神話にたいする、「中世神話」の世界である、というのが、僕の解釈。
コミック版のクライマックス、土鬼(ドルク)の聖都シュワの中心部にある
旧世界の遺跡=墓所に秘められた、「腐海」の成り立ちの「秘密」をナウシカが知るところは、まさしく中世神話・中世神道の世界なのでした。詳しくは拙著、参照。
それにしても、腐海の瘴気を防ぐマスクをしているナウシカを、コロナ対策のマスクをして観ることになるのは…。
なんというか、一種の連帯感も感じてしまいました(笑)
写真は、劇場のポスターです。