2018年は「イースポーツ元年」ともいわれ、日本では「Esports」というワードを見かけることが日増しに増えてきました。
特に、いくつかのカードゲームタイトルも、こぞって「Esports化」、あるいは「プロリーグ作成!」ということを唄い、Esportsの流れの中でカードゲームを盛り上げようとしています。
本記事は、読者の皆さんに、単なるイメージや夢をお伝えするのではなく、カードゲームが現在置かれている「事実」あるいは「実像」を伝えることを目的としたものです。
特に「プロカードゲーマーになりたい」と思っている人、カードゲームを仕事にするべきか迷っている高校生くらいの人は、文章が苦手でも、太字部分だけは読むべきです。
1.Eスポーツの市場規模
2.Eスポーツの中のカードゲームの地位
3.カードゲーマーに高額スポンサーや高額出資者はつくのか
4.競技的に上を目指すカードゲーマーが今後、すべきこと
5.カードゲームに「バブル」は起こるのか
この5つに分けて、言いたいことを書いておこうと思います。
なお誤解しないでいただきたいのは、本記事はあくまでプレイヤーが現実にどう立ち向かうか、という点を強調したものであり、既存の企業・団体・大会などを批判することを意図したものではありません。
そうした悪意のある形での引用・捻じ曲げはご遠慮ください。(もし引用や言及をしたい場合は、書き手である@zero_rivalsのDMまでご一報をお願いします)
特に、いわゆるまとめ系サイトへの転載・引用は固くお断りさせていただきます。
後これらの情報は、業界関係者からすれば当たり前もしくはレベルが低い話かもしれませんが、僕からすれば同レベルの危機感や使命感をもって話ができる友達が現在はいないという内容でもあります。
(主にそうした理由により、無料で公開します)
なので、この文章を読んで、賛成でも批判でも、ご意見のある方は@zero_rivals にまで送ってくれれば大変ありがたいです。
1.Eスポーツの市場規模
社会的信用度が高い資料の1つとして、総務省(及び、Gzブレイン)のデータがあります。
http://www.soumu.go.jp/main_content/000551535.pdf
ニュースサイトなどで用いられる基礎統計の多くはこの資料をソースとしています。
(余談ですが、Eスポーツ関係の玉石混交とも言える情報を整理する際は、「その情報が1次情報であるか」をまず調べましょう。1次情報以外を信用しない、という自分ルールを作ることで、余計なバイアスを排除し、正確な状況や、関係者の真意を知ることができます)
ともあれ、この総務省の資料から、主な数値をPick Upしてみると、早速、1つの違和感にぶち当たります。
・MOBAゲームの市場規模 2016年時点で欧州、米国、アジア合計で8兆円
・ESports市場の規模は2017年で700億円、2021年には1800億円まで成長見込み(米調査会社Newzooによる予想)
ん??Eスポーツの市場規模が、MOBAより小さい???
……まず、この数値を比較して言えることがあります。
Eスポーツ市場と、MOBAやTCGなど、各ゲームの市場というのは、ハコ的には別のハコであるという点です。
もし、夢を持った若者が「Eスポーツという言葉には、FPSやカードゲーム、格闘ゲーム、ぷよぷよなど、色んなゲームタイトルが含まれる」とだけ漠然と考えていると、まずこの市場規模の数字に面食らうのではないでしょうか。
さて、Eスポーツ市場と、各ゲームの市場。線引きがやや曖昧なものではありますが、
・各ゲームの市場は、タイトルの直接の売り上げや課金に関わる市場(LOLで言えば、課金分や関連する公式製品の市場。シャドウバースで言えば、全ユーザーの課金額)
・Eスポーツ市場は、大会や、その出場チームにまつわる市場(LOLで言えば、LJLとその参加チームなどに関する市場。シャドウバースで言えば、RAGEの取り組み)
と分けて考えておけばいいでしょう。
例えば、マジック・ザ・ギャザリングは20年以上続いているカードゲームです。
メーカー(ウィザーズ)も「今後はEスポーツ化」をうたっています。
しかし、「同カードの売上全てを、Eスポーツに関わる売上と換算する」かどうか(あるいは、第三者的な組織がそう判断するかどうか)は、正直、まだ未知数です。
ともあれ、
ゲームタイトルそのものから生まれるお金と、Eスポーツという言葉から生まれるお金。これをまず、分けて考えた方がいい。
この認識がなかった方は、まずこの認識を持ってください。
2、Eスポーツの中の、カードゲームの地位とは?
同資料ではShadowverseやドラクエライバルズなどのカードゲームの存在に触れていますが、市場規模は明言されていません。
そこで、僕なりに推理するために、2つの海外資料にあたってみました。
https://twitchstats.net/
ひとつはtwitchstatsと言われる、twitchの統計をたくさん集めた海外サイトです。
(同種のサイトは他にもいくつかあります)
こちらのサイトを見ると、カードゲームで国際的に最も善戦していると思われるハースストーンの総視聴者数は、最人気MOBAゲームのおよそ4分の1となっています。
ゲーム別ランキングのハースストーンの上には、MOBAの人気タイトルが更に複数並んでいるわけで…
「MOBAの総視聴者数 VS カードゲームの総視聴者数」
という勝負をすると、4倍どころでは済まない差がついていることになります。
もうひとつは、Esports Earningsという、チーム別、プレイヤー別、タイトル別などで、獲得賞金がまとめられたサイトです。
https://www.esportsearnings.com/
このサイト、Shadowverseでふぇぐ選手が100万ドルを獲得したことがなぜか反映されていないなど、日本に冷たい所はありますが、国際的なタイトルやチーム、選手については非常によくまとめられています。
「選手別」で獲得賞金総額を見てみると、上位100名はずらりとMOBAのトッププレイヤーが並びます。ここでも、カードゲーマーは中々出てきません。
また、「タイトル別」で動いている賞金の額を見ると、
・カードゲーム最人気のハースストーンは約1500万ドル
・MOBAで最人気のDota2は約1億7000万ドル
と、桁が一つ違うことになっています。ここでも、最人気タイトル同士の規模の差が10倍ならば、総合計の差はもっと広がっているだろう、という推測が成り立ちます。
3.カードゲーマーに高額スポンサーや高額出資者はつくのか
1~2から、おのずと見えたと思います。このままでは絶対につきません。
(私も含め、既にスポンサードしている/されている関係性をお持ちのカードゲーマー関係者の方には、大変失礼な指摘となってしまい、恐縮ですが)
総視聴者数も、総賞金総額も、MOBAの10分の1以下。
フォーブスも、ブルームバーグも、こぞってE-sportsチームへの投資ニュースを取り上げてはいます。
参考:https://forbesjapan.com/articles/detail/23571
しかし、彼らに高額なお金を出資する人は、どの部門から、どの選手から、そのお金が返ってくること(リターン)を見込んでいるのでしょうか?
少なくともカードゲームだけがメインではなさそうです。
Eスポーツという文脈で、MOBAやカードゲーム、格闘ゲームなど多くのジャンルが同列に語られがちな世の中ではありますが、安易に同列で考えることはたいへん危険である、ということを、こうしたニュースの裏として読み取ってほしいと思います。
4.競技的に上を目指すカードゲーマーが今後、すべきこと
以上の現実を踏まえた上で、競技カードゲーマーの皆さんは「自分がどうなりたいか」を真剣に考えるべき時期に来ていると思います。
1日12時間~13時間出来るほどゲームが好きなので、ずっとゲームが出来るよう誰かに支えてほしいのか。
(その「誰か」とは、出資者や事務所かもしれませんし、配信プラットフォームかもしれませんし、リーグかもしれませんし、あなたの未来のリスナーかもしれません。自分が「誰に」好かれやすいのか、ということも判断材料の1つになるでしょう)
ゲームは1日4~8時間程度出来ればいいから、それよりもゲームで自らお金を作る仕組みを構築したいのか。
遠くからゲームについて、ああだこうだ考えるだけの生活で満足なのか。
大会ごとに、自分なりに全力を尽くせればベストなのか。
単にゲームを長時間やりたいだけなら、時給の良い他の仕事をしながら残った時間をゲームに充てる、っていう選択肢もあります。
少なくとも、「Eスポーツブームだから、カードゲームが上手ければ何か道が開けるだろう」という考えだけで、漠然とゲームにオールインしてしまうと、後から自分で自分に納得ができなくなるかもしれません。
リヴァイ兵長も、このように言っています。
悔いなき選択を。
5.カードゲームに「バブル」は起こるのか
このような苦しい地位のカードゲームが、MOBAと並ぶ、あるいはMOBAに匹敵する市場になりうる可能性はあるのか。
私は、4つの可能性のどれかから、その「バブル」も起こり得ると思っています。
バブル要因1.オリンピック競技になる(可能性:8~12年後)
参考:https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20180905-00095762/
先日、否決されたばかりなので、再度検討材料に挙げてもらえるのは、遅くとも2020東京の次の次くらいからでしょう。
バブル要因2.MOBAやFPSプレイヤーのセカンドキャリアとして各種メディアに取り立てられる(可能性:5~10年後)
現在のEスポーツブームを作り上げたのは間違いなくMOBAです。しかし、アクション系ゲームは反射神経を要求されるため、長く続けることができないという場合があります。(タイトルによって細かい事情は違うため、ここではあくまで可能性の1つとして触れるのみです)
現状はコーチやマネージャーという受け皿もありますが、そうした引退後のMOBAプレイヤーの受け皿の1つとして、地頭やゲームセンスが良ければ年齢を問わず戦えるカードゲーム、というものが、盛り上げられることになるかもしれません。
そうしてメディア主導の盛り上げ方をされるなら、そこには多くのお金が流れ込むことになるため、カードゲーム1本で食える人は増えます。
(昔からカードゲーム一筋でやってきた人に取っては、今後そうした流れができてしまうと、あまり面白くないかもしれませんが)
バブル要因3.カジノ業界との連携(可能性:早ければ2~3年後だが大変な危険が伴う)
日本でもカジノができるということで、にわかに盛り上がりを見せていますが、自分としては「カジノ業界の人と、カードゲーマーとの間の気質の違い」という点を大変心配しています。
例えば、カジノでは、「最終的に胴元は損をしない仕組みになっている」「ときどき、接待の場としても使われる」といった、政治的な気質は是とされる傾向があります。
しかし、カードゲーマーは、民度の高いタイトルでは、イカサマプレイヤーが徹底的にBANを受けることに見られるように、どちらかというと政治よりも正義寄りの気質が是とされる傾向があります。
特にDTCGのプレイヤーの中には、「デジタルであればいかさまが出来ないから、リアルカードをやめて移行した」というプレイヤーもいます。そうした正義感の強いプレイヤーが、カジノとうまく付き合えるか、という点は大きな課題です。
経験上、慎重なカードゲーマーほど、カジノのことは話題に出したがりません。
(僕も普段は話題に出さないのですが、あまりにも安易に出す人もいるため、くぎを刺す意味で言及しました。)
バブル要因4.カードゲーム業界の人がすごい秘策を隠し持っていて、カードゲームをMOBAと同レベルの文化にできるビジョンがある(可能性:未知数)
もしこの秘策を持っている人がいたら、今の他の仕事を全てやめてでも、僕はそこで働きたいと全力思います。
以上、バブルが起こりうる4つの可能性でした。
なお僕個人としては、
要因4に当てはまる人物がいないか、常にアンテナを張りながら、
大会出場と両立可能な仕事を続けている、という生活に収まっています。
また、バブル要因には直接なりえなくても、カードゲームが報われる時代に備えて、
凡事徹底と修練を欠かさない、志のあるプロが、日本に既に何人もいることも追記しておきます。