タヒチから帰国した僕を、母は強く抱きしめた。
「なんだか、また一歩本物の男になったね。」
目を赤くした母は、両腕を掴み、声を弾ませる。
僕が海と向き合い、人生と向き合い、前向きになっていく中で、
母の愛情表現はストレートになっていく。
母と子の無条件の愛とは格別に違う、
敬愛を親子でかみしめていた。
相手を敬まえば敬うほど、気持ちが通じ合い、
尊ぶ心で、気持ちを包み合う。
何が起こっても不思議でない、先の見えない未来、人、こころ。
そんな毎日を唯一救えるのは、未来への確信でも通り過ぎる人でも自分自身でもない。
敬愛する相手だ。
僕は、母や兄ィ達を敬愛する毎日に心底、幸せを感じていた。
でも、もう一人、敬愛を確かめたい相手がいる。
お父さん
手を繋いで公園に行く夢を見ない日はない。
眠りにつくまで僕の髪をなでる姿を想い浮かべない日はない。
おぼろげな記憶の中の父は、いつも僕を優しく見守ってくれた。
いまだにわからないんだ。
お父さんのことを考えると、何もわからなくなるんだ。
頬を伝う涙にまかせて、まだ見ぬ波と父の足跡を追う旅を誓った。
- 2年間、バイトと海に明け暮れ、その日をじっと待った。。
