サーフィンというスポーツには、たったひとつのルールがある。


【前乗りをしない。】


波をとらえて、真っすぐに滑り降りることが板についてきた僕に、

カイト兄ぃは、そのルールを教えてくれた。


「サーフィンをしている時、大会で無い限り、点数なんてないだろ。

ここがスタートでここがゴールです、なんてこともないだろ。


各々が無秩序に楽しんでいるように見えるよな、海の中で。


でもな実際は皆、無言でルールを守っている。


波が一番初めに崩れ始める‘ピーク’から、誰かが波に乗ったら

その波には乗ってはいけないんだ。


乗る行為を前乗りと言って、例えプロでも侵せない。


よく周りを見て波をつかめ。もし、乗ってしまったら、心から謝るんだ。」


サーフトリップのススメ


部原海岸は、ピークの位置がわかりやすく、僕は海のルールに淡々と従った。


その日、ルールを気にするあまり一本も乗れなかった僕の肩に手を置き、

兄ぃは呟いた。


「それでいいんだ。

ルールは何かを縛りつける。縛られて始めて、連帯感、一体感が生まれる。」


正直、僕は心地良かった。

サーファーの一員になれたような気がしたんだ。


「おまえは、その中で枠を超えろ。常識にとらわれて、あたかもルールのように存在する枠は超えろ。」


そうだ、あらゆる枠を超えて、僕は歩むんだ。

四角四面の穴に、丸い杭を打ち込もうとした先人達のように。。