台風を知る。
僕が出逢った兄ぃ達は、皆 風の動きや天気に敏感でいつも天気図を眺めていた。
それもそのはず、この時期は一年で最もサーファーが落ち着かなくなる季節。
ある9月の週末、久しぶりに兄ぃからの連絡。
「台風8号が近づいている。勝浦に行くぞ。」
南太平洋から近づく台風は、父島を暴風圏に巻き込みながら、北上していた。
九十九里の湾岸道路、海はゴーという地響きを立て、荒れ狂っている。
いくつかのトンネルを抜け、南房総の山あいを縫い、勝浦の湾に辿りつく。
「俺と一緒にここからパドルして、沖でじっとしていろ。」
はい。。カイト兄ぃがいつもより言葉少なだから、僕まで声が震える。
その湾は家の中の金魚鉢のように、外海からシャットダウンされているように静かだ。
パドルでしっかりとついていき、岬の先から景色が開けた瞬間。。
巨大で見た事もないような波がそそり立っている。
それでいて僕のいる、この場所には波が来ない。そうか、あそこだけ急激に浅くなっているのか!
波は官能的なほどに口をあけ、サーファーを呑みこんでいく。
波を待つ屈強な男たちは、俺が海の恋人と言わんばかりに、遠くをみつめている。
そして、裏腹に皆 静かだ。
兄ぃが無言で岸に上がり、服に着替えた後、ゆっくりと力強く話始めた。
「誰も死にたくはない。でも、死んでもいい。
そんな覚悟で皆 臨んでいるんだ。
生きていく中で、こいつの為なら俺はどんな犠牲もいとわない。
そんな好きなこと・好きな人に出逢えたなら、こころゆくまで身を捧げろ。
そこには、その人にしか見えない幸せが待っている。」
僕は今、その幸せに向かって歩を進めている。
全てをかけるだけで、幸せが手に入るなら、そんな簡単なことはない。
僕の細く弱かった15年間の人生という火が、急激に燃え上がるのを感じた一日だった。
