海の家が、早々とシャッターを打ちつける。


都会の喧噪ならぬ、砂浜の喧噪は長い冬眠を迎えようとしている。


9月も立派な夏だ、そう言いたい。



新学期に入り、僕を巡る環境は明らかに変わっていく。


日焼けした肌に、ひとまわり大きくなった上半身。

無口に変わりはないけれど、僕は教室の隅から、皆に心を開いている。


クラスにはもう一人、無口な男がいる。

喧嘩で負けなし、たまにしか学校に来ない、シュウマ。


一度、些細なことでつかみ合いになったことがあるが、クラスメートとの接点があったのも、その一度だけだ。

こんなことを言うのもおかしいが、僕はその思い出を大切にしまっている。


週末、僕の第2の学校、海への通学が待っている。

サーフボードをケースに入れ、JRと江ノ電をのりつぎ、由比ヶ浜へと出る。


車もお金もない、ゆえにチョコチップスティックをコンビニで買い、始発の電車に乗り込むのだ。

言いようのない孤独を感じる僕にとって、いろんなジャンルの人々が、ただただ肩を寄せ合う車内が

妙に落ち着く。


何からも捨てられていない、社会から、学校から、仲間から、家族から、、、父から。

電車はどこか、そんな不安を埋めてくれる。


今日もキャップを深めにかぶり、朝一の電車を待っていた。

「カナル、俺も連れて行ってくれないか?」


シュウマだ。


うなずき、のりこみ、沈黙。景色が現れては、ふたりの間を通り過ぎていく。

海の中でも、シュウマはただ黙って、僕のサーフィンする姿を、見つめていた。

5時間は入っていただろうか、歯を鳴らし、小刻みに震えている。


ようやく納得の1本の波に乗り、浜辺に向かう。


心地よい疲れにつつまれ、海の優しさに抱かれ、ふたりの顔は微笑みを帯びている。


そして、ごく自然に無意識に手を差し伸べた。

力の限りではない、こころの限りにお互いの手を握った。。。「あの時は、すまなかった。」

お互い声になっていたかは、わからない。

サーフトリップのススメ




ただ、帰りの車中、ふたり 肩を寄せ合い眠りに落ちたことは、はっきりと覚えている。


海がまたひとつ、僕を救ってくれたひとときだった。