The Atticのあっけらかんとしたポップ・アレンジ、kling I Klangのタテノリ感など、とにかくこれまでにないテイストが次から次へと押し寄せてくる。とてもベテランのアルバムとは思えない、恐ろしいまでの攻めっぷりだ。That Dangerous Ageなんかは例えばデヴィット・ボウイだったら十分にありそうなんだけど、ポール・ウェラーがこれをどんな風にライブで歌うのかとか考えると、想像力が追いつかない。
リーディング・トラックとしていち早く公開されたLove Interruption。エレピやクラリネットの物憂げな調べに乗せて、I want love to・・・と何度も繰り返す、濃厚なラブソングである。メロディーがかつてないくらいにストレートにメロウで、クラシカルな魅力さえ感じさせるところに、随分と思い切った選択をしたと思った。この曲以外にも、Blunderbussでは緩やかなペダル・スチールをバックに、表情豊かなヴォーカルを聞かせる。
「Get Behind Me Satan」をリリースした頃から、形にとらわれない表現に取り組んできたジャック。ブルースやカントリーを音楽的素地としている点は変わりようがないわけだけど、ソロでは更に素直にアプローチしている印象を受ける。サウンドの幅を格段に広げた分、ホワイト・ストライプスにあったロックンロールの「際物的」なテイストはここにはない。代わりに風格十分のクラシカルな魅力にあふれたロック・アルバムに仕上がっている。
The Shins、4作目のアルバム。サブポップからリリースされた前作「Wincing The Night Away」が全米2位と、インディ・バンドの作品としては異例の大ヒットを記録した彼ら。その後、メジャーへ移り自主レーベルを設立。そしてジェイムス・マーサ以外のメンバーがチェンジ。様々な変化を経て、今作のリリースにこぎ着けた。
オープニングThe Rifle's SpiralはBroken Bellsでの経験を感じさせる、密室的ポップソング。シンズらしさを感じつつも、新しいステージに向かおうとしていることをにおわせている。そして、2曲目Simple Songの思いの外スケールの大きいメロディーとアレンジに度肝を抜かれる。しかもジェイムスのヴォーカルは非常にエモーショナル。おそらくライブではシンガロング必至であろう、キラー・チューンとなっている。驚きはまだ終わらない。3曲目It's Only Lifeもまたサウンド的にほとんどひねりのない泣きのラブソング。ここでもまたジェイムスのヴォーカルが冴えていて、情感豊かに大らかな恋心を歌っている。
全体的な印象としては曲のヴァリエーションが増えたと同時に、エモーショナルでダイレクトなサウンドスケープが目立つ。メロディーの質的には過去最高だと思う。ただ、元々メロディーメーカーとしては申し分のない力を持っているが、素直にメロディーの良さを生かせばいいところを、華美になりすぎているように感じてしまった。No Way DownやFall Of '82あたりの80's的なアレンジも新鮮ではあるけれど、もうひとつ魅力的には響いてこなかった。良くできているとは思うんだけど、グレッグ・カースティンのプロデュースがエッジを丸めてしまったのか。
ベストトラックはThe Rifle's Spiral。ラストのPort Of Morrowはアシッドなジョン・レノンで良い味出しているし、For A Foolなんか本当に良い曲なんだけどなぁ。セルフ・プロデュースでリアレンジとか、どうでしょう?