箱入り息子の恋 | Surf’s-Up

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音楽の話を中心に。時にノスタルジックに


箱入り息子の恋 DVDファーストラブ・エディション/ポニーキャニオン
¥4,935
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星野源初主演,という興味だけで借りてきた,この作品。

なんと3回も観てしまいました。

極度のあがり症で,彼女いない歴35年,人付き合いを避けてきた男の恋物語なんですが,突っ込みどころは結構あるし,「このご時世にそれですか」というベタな展開もある。しかしながら,それが途方もない切なさを引き出しています。


ヒロインの夏帆さんが素晴らしい演技をしています。ガラスのような繊細さ,人生の喜びへの覚醒。ファンタジーだけじゃなくて,盲目でも女性であることのリアルもしっかりと表現していました。


主人公,天雫健太郎を演じる星野源は,実際はほとんど共通点なんか無いんだろうけど,でもほかに誰がこの役をできるのかと言ったら,見つからない。「もてない」演技をできる人って,意外と少ないんですよね。


ぎこちないスタートから,徐々にお互いを求めていく2人。でもその前に必ずあるのが、なんともすがすがしい振る舞い。


例えば,初めて吉野家に行くシーン。左利きの彼女の腕にぶつからないように,そっと右に移動する。腕枕してて,気がつけばめちゃめちゃしびれてるんだけど,起こすの悪いから腕を抜けずにいるってこと無いですか?お互いのやり方で,相手をいたわるところになんかグッとくるんです。


清純なだけではなく,湧き上がってくる自分の欲求に驚きとためらいを覚えながら,近づいていく二人の距離。それって,例えば中高生くらいの頃に経験する感情で,人としてのスタンスや志向が固まっていないときに訪れるものだと思う。


しかし,ある程度年を重ねて,自分の輪郭ができあがりつつある二人なのに,恋するときの初々しさが半端ではない。むしろ逆に中高生よりも初々しいかもしれない。それは,一方は他人に迎合しないことで,もう一方は見えない目の代わりに磨いた心のセンサーで,見た目や経歴,障害に惑わされない「感性」を持ちうることができたからだろう。


ハイライトは終盤の奈穂子が一人で吉野家に行くシーン。ここは涙無しでは観られません。書いてる今,思い出すだけでもダメなんです,僕(笑)。


音楽は高田漣。主題歌を歌うのは細野晴臣。バンドメンバーが伊賀航,伊藤大地と,まさに星野源人事。もちろんステキです。


最後に,気がつけばカエルの鳴き声をまねしている自分がいます。まぁ,観ればわかります。もう1回観ようかな。