- Monomania/Deerhunter
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Deerhunter、5作目。
傑作3rd、Microcastleをさらにドープにしたような前作、Halcyon Digestから3年。その間Atlas Sound,Lotus Plazaでも良質なアルバムをリリースし続けていたわけで、創作意欲の強さが見て取れる。ちなみにブラッドフォードは制作前のリハーサルで、280曲以上を書き上げたらしい。
アルバムタイトルが書かれたネオンサインという、実にシンプルなジャケット。その佇まいが象徴するように、真夜中のガレージ感溢れる、テンションの振れ幅が大きいサウンドになっている。
オープニングのNeon Junkyardは、曲調はフォーキーでメロディーもしっかりしているが、粗暴なギターとヴォコーダーによって、すっかり不健康な姿になっている。そして、シンプルなリフから無軌道なノイズに導かれるように狂気の入り口をこじ開けるLeather JacketⅡが最高。アルバムの中ではこういうラフな曲が際立っている分、精密なプロダクションではなくて、勢いに任せた感もある。アルバムタイトル曲Monomaniaも素晴らしい。終盤のリフレインは圧巻だ。ライブで是非聴きたい曲。
ただもちろん、そういったナンバー一辺倒で終わるはずがないのがDeerhunter。The Missing、SleepwalkingのようにLotus Plazaのような浮遊感のあるギターロック、T.H.M.のようにメランコリックなギターに乗せて、穏やかに歌われる曲もある。
また、アメリカのルーツ的要素が随所に垣間見られるのも、今までにはあまりなかったこと。Pensacolaは下地にカントリー・ブルースがあるのは明白だ。巧みに音楽性をコラージュしてきた彼らであるが、今回はアプローチが思いの外ストレートだ。
楽曲は全体的にメロディーがわかりやすいものが多い印象だ。元々、ガンガンメロディーの書ける人ではあるが、ここまで浮かび上がらせたことは無かったと思う。緻密なレイヤー、人工甘味料的コーティングを極めた前作と比べるとなおさらそうだし、Microcastleと比べてもメロディアスであるように感じられる。
荒っぽさがありながらも、所々で違った様相を見せることで、バンドの実体をミステリアスなものにしているところが、聴く人によっては近づき難く感じられるのかもしれない。しかしながら、制御ギリギリの狂気感をサウンドにぶち込める人ってそうそういない。変な言い方かもしれないが、僕はDeerhunterに「不完全な傑作」を作り続けて欲しいと思うのだ。
ちなみに、ベストトラックはLeather JacketⅡ、Nitebike。ギリギリ曲の体を保っているって感じで、「不完全な傑作」には欠かせないピース。
(02/08/13)