- リサンドレ/クリストファー・オウエンス
- ¥2,300
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Girlsから脱退したクリストファー・オウエンスのソロ1st。
実在する女性に向けて作られたというこのアルバム。出会いから別れまでを、アナログなサウンドで綴っている。アイディア自体はかなり前からあったそうだが、ほかのメンバーが乗り気でなく、結果的にソロ作品としてリリースされることになった。
プロデュースはgirlsの2ndでも務めたダグ・ボーム。古い映画のサントラのようなインストナンバーからシームレスにつま弾かれるアコギのアルペジオ。Here We Goなんて大仰なタイトルがついているが、フルートとハーモニカがロマンティシズムを演出している叙情的なナンバーだ。
続くNew York Cityではポップなサキソフォンに乗せて、クリストファーが軽快な歌を聴かせる。かなり新鮮だけど、この開けっぴろげなポップ感に面食らう人もいるんじゃないだろうか。
サウンド的にはアコースティック楽器を主体に、ロマンチックかつフォーキーな世界を作り出しているが、Girls時代よりポップ寄りに広がりを見せたという印象だ。
しかし、「甘さ」よりも奥底に潜んでいる「ほろ苦さ」は以前と全然変わらない。こんな風に愚直なラブソングを綴ることで、魂の安住の地を見つけようとする、ナイーヴであまりにも不器用なその立ち姿も不変だ。
しかし、その反面、不可解な展開が目立つのも正直なところ。たとえば、ちょこちょこ挟まれるリサンドレのテーマは必要だったのか?そのような手法を用いなくても、十分連続性はあると思うし、逆に入ることで意識が拡散されてしまうような気がするのだが。Everywhere You Knewのようなストイックで美しいナンバーの後に、がーんとリサンドレのテーマが入ると聴き手の中に膨らんでいくストーリーの流れが寸断されてしまうのだ。
それと楽曲の完成度はどうだろう?クリストファーの存在感があれば、ある程度個性的な響きをもたらすことはできる。しかし、それを持ってしてもやや弱さが感じられるナンバーもあるような気がするのだが。
魅力的な曲はいくつかあるし、クリストファーの切実さも十分伝わってくるんだけど、単純にアルバムのスタイルが個人的に好みじゃなかったのかもしれない。
★★★☆(04/03/13)