すとーりーず/ZAZEN BOYS | Surf’s-Up

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すとーりーず/ZAZEN BOYS



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ZAZEN BOYS、4年ぶりの新作。通算5作目。


「ポテトサラダ」がリリース前にHPにアップされたが、これがかなりの衝撃だった。


相変わらずの金属的ファンクネス・ナンバーではあるのだが、ここから発せられるアッパーなポップ感。日常のささやかな欲望を並べ立てた歌詞もなんだかストレート。重厚なグルーヴ感を追求してきたザゼンにしては、実にあっさりテイスト。


この奇妙なポップ感がこのアルバムの肝となっている。オープニングの「サイボーグのオバケ」も、変拍子にガシガシリフが刻まれていくんだけど、それ以上にヴォーカルが立っている。歌詞に人名が入っていると弱い僕には、たまらないナンバーで、おそらく「村田英雄」という名前を使ったロックはこの曲が最初で最後でしょうね。


また、東風みたいなイントロの「はあとぶれいく」なんて、80’sポップとニューウェーブの狭間にあるような浮遊感のあるナンバーに仕上がっている。「なーんか」「なーんで」とメロディーに歌詞を流暢に乗せようとしているところも新鮮。


後半になると、これまでのような変態的なグルーヴが少しずつ顔を出す。「サンドペーパーざらざら」のいびつでフリーキーなヴォーカルの方がやっぱり聴きなじみがある。そして、ラストナンバー「天狗」の暴力的なぶっといギターリフで個人的にはやっと昇天できた。


それでも、これまでの作品に比べると音数が少なくなった印象を受ける。構造的にシンプルになったというか、いい意味での「軽量化」を狙ったような感がある。音が減ってはいるけど、必要なものだけをしなやかに鳴らしている。


個性的なグルーヴを阿吽の呼吸で描く。聴き手としてはどうしてもそこに行きがちな意識が、今作ではがらりと変えられている。言葉がメロディーが、自然と染み渡っていく。向井秀徳のような希有な感覚を持つ人間が生み出すものが、自然と入ってくること自体驚きなのだけど、下世話にならないほどのポップ性を獲得したことでさらにおもしろい方向へと進化しそうである。


★★★★(24/02/13)