FADE/YO LA TENGO | Surf’s-Up

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Fade/Yo La Tengo



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Yo La Tengo,3年半ぶりの新作。通算13作目となる。


今や説明不要の存在とも言える彼ら。USインディーの中で、何に流されることもなく自分たちにしか作れないものを実直に作り続ける、理想的なあり方を見つけたバンドだろう。


それ故に、今更劇的に音楽性が変わるってことはない。もう十分に自分たちの音楽を作る「畑」は興されているし、豊かな土もある。そういう絶対的なものをこのバンドは持っているし、だからこそ信頼できる。


プロデューサーはジョン・マッケンタイア。昔からの知り合いだったようだが、組んだのは初めて。彼のプロデュースした作品にある共通のトーン。それは音の整然さ。無駄なくバランスよく音が配置されているのだけど、このアルバムもまさに音が厳選され、サイケテイストやドリーミーな曲があっても、音像がファットにならない。見事にシェイプしており、そして不思議とオーガニックな風合いを感じさせるものになっている。


そして、彼らのどのアルバムにもだいたい入っている「ささくれだったエクスペリメンタル・ロック」を標榜するような長尺のナンバーは見当たらない。それ故に、彼らのアルバムの中ではかなり聞きやすい部類に入ると思う。


オープニング、ohmでは雄大なメロディーと迫力あるノイズギターがうまく溶け合い、幽玄的な空間を作り出すことに成功している。こんな感じでアグレッシブに行くのかと思ったら、2曲目is that enoughでは流麗なストリングスに優しげなヴォーカルを聴かせている。3曲目Well You BetterはSea And Cakeを思わせるような、ミニマルかつタイトなポップナンバー。


といった感じで、サウンド面の幅は割と大きい方だと思う。それでも、今作はやりたいことをやりつつも、どの曲にも静的なテンションを漲らせることで一本筋が通ったアルバムに仕上がっている。グランジみたいなPaddle Forward、ラストの壮大なBefore We Runがあっても、佇まいとしてはサイケ・フォーク色の濃いロック・アルバム、という肩書きがビシッとはまる。


個人的には終盤の流れが秀逸だと感じる。Cornelia And JaneからBefore We Runまで、息をのむような張り詰めた空気感から一気に解放されていく瞬間へとつながっていく。彼らの十八番の怒濤のノイズもサイケもここにはないけど、ドラマティックな音空間を見事に作り上げている。


まずは2013年のベストアルバム有力候補。間違いありません。



★★★★☆(25/02/13)