Heaven/The Walkmen | Surf’s-Up

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Heaven/Walkmen



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The Walkmen、通算6作目になるアルバム。

前作「Lisbon」も最高のアルバムだったが、今作もその流れを受け継いだ、飾り気なしの高潔なロックアルバムとなっている。

アコギをつま弾き、カントリーテイストのWe Can't Be Beatでアルバムは幕を開ける。続くLove Is Luck、Heartbrakerへと徐々にギターのテンションが上がっていく。

決して音数が多いバンドではない。独特の隙間のあるサウンドスケープはJFE時代から変わらずで、それが魅力ではあるのだが、このアルバムでも見事にそのコンセプトを貫いている。

作品を重ねるごとに曲調がややオールドウェイブな方へと傾きつつあるように感じられるので、それ故、全体的にはやや枯れた印象がある。それでもタイトル曲HeavenやThe Love You Loveといった彼ら十八番のシンプルなリフから緩やかに上り詰めていく清廉なロックナンバーもしっかり収録されている。

60年代っぽい歪みやノイズの少ないギター、そしてオルガンと軽いドラム。そんな中で、魅力的に聞こえるのはハミルトンのヴォーカルだ。よくバリトンボイスと形容される彼の歌声であるが、この深みとしゃがれた感じが個人的には大好きだし、このサウンドには実によく映える。

そしてサウンドスケープをシンプルにすることで、この愚直なギターロックは神への祈りのような直情的な響きを生んでいる。そこがたまらない。

包み隠せるものがないからこそ、骨や血管が皮膚から浮き上がってくるような、ぎりぎりの生身の姿をさらけ出すことになる。でもその姿が本当に美しいのだ。この研ぎ澄まされた感覚を持っているのがThe Walkmenの最大の武器だと思う。自分が死ぬまでこういう感覚を持ったバンドがいて欲しいと本気で思っている。

★★★★☆(15/12/12)