The Only Place/Best Coast | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 カリフォルニアの男女デュオ、ベスト・コーストのセカンド。デビューアルバムが高評価を得てのセカンドとなるわけだけど、彼らの場合はむしろ極端に変化しようがないというか、偉大なる普遍性をここで確立できるか、そこにかかっていると思う。その点では、このアルバムはしっかりとクリアできている。

 爽やかさとほろ苦さを抱えた3分間ポップス。それはもう半世紀以上ほどの歴史を経て、大衆の心を魅了し続けているわけで、この事実に僕はすごく安心感を覚える。変わり続けるもの、進化し続けるものがあるとすれば、普遍的な価値だとか頑なに守られるべきものも対局にあるべきだと思う。そして、そのどちらも非常にセンシティブな作業が必要とされていて、表現者達は時に気が狂いそうになりながらも、妥協せずこつこつとそれらを積み上げていく。その積み重ねが、聞き手を感動させる作品となって現れる。


 そのセンシティブな作業を怠ると、ただのマンネリや二番煎じといった、表現者として一番しょうもないレッテルを貼られる。なんか上手く説明できないんだけど・・・わかってもらえるだろうか。


 サウンドの構造は王道ポップス、しかしどこかインディー的なアティチュードでエッジを効かせたファーストは個人的にもよく聴いた。曲はヴォーカルのベサニー嬢が作り、トラックをボブが作るというスタイルのせいなのか、ヴィンテージな楽器の鳴り、リヴァーヴのかかりかたも絶妙で、良くできた一枚だったと思う。


 で、肝心のセカンドであるが、まず音の分離が良くなったというか、とにかくクリアーな音質になったことがわかる。ラジオから流れてくるような「雰囲気」的なものが、ここでは意図的に排除されたようだ。ここは正直言うと、僕は残念に感じた。ファーストの1曲目、Boyfriendのリヴァーヴやエコーの効いた感じが結構好きだったんだけど、今作では控えめになっている。


 しかし、ソングライティング・アレンジの面では大変充実している。前作以上にキャッチーかつメランコリックなメロディーから、ベサニー嬢の力量の向上を感じ取れる。若干似たテイストのものが続いてしまうのだが、クラシカルなポップス、スタンダード調、ギター・ポップ、ドゥー・ワップっぽいものなど幅が広がってきている。着実な成長を遂げたセカンドだと言える。


 ベストナンバーはラストのUp All Night。別れた恋人に未練たっぷりな様子を歌い上げる、ベサニー嬢のヴォーカルが素晴らしい。この曲も含めて詞はかなりの直球。そういうところも王道か。


 ★★★★(20/10/12)