In Ghostlike Fading/My Best Fiend | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 NYブルックリン在住の5人組、My Best Fiendのデビューアルバム。ワープからのリリースであるが、れっきとしたロックバンドである。スタートはエレクトロのデュオだったそうだが、ライブをしていくうちに生楽器の必要性を感じるようになり、今のラインナップになったとのこと。


 制作に当たって、ライブ・レコーディングという形式を取ったそうだが、確かにライブらしい緊張感が漲った演奏がここでは聴ける。もちろん自分たちの力量に自信を持っているからなのだとは思うが、サウンドを作り込むことに執心してしまうあまり、頭でっかちなアルバムを作ってしまう新人が多いような気がしていたので、こういう選択は非常に賢明な策なのかもしれないと感じた。


 メランコリックなイントロ、泣きのメロディー、重めのビートで構成されたリードトラック、Higher Palmsでアルバムは幕を開ける。徐々にサイケなギターが広がりを見せ、祈りのようなサビのコーラスはかなりキャッチー。この曲だけでなく、メロディーラインが耳に残る曲が多い。雄大だけど、どこか哀愁を感じさせるメロディーラインはアメリカ70年代あたりのソフトロックをベースにしていて、アコギの弾き語りでも十分にその魅力を味わうことができる。


 2曲目はオルタナ・カントリー調の、その名もズバリJesus Christ。スピリチュアライズドのような宇宙空間までぶっ飛んでいくようなサイケデリアではなく、地面を力強く歩いていくような実直なナンバーだ。3曲目は7分以上に及ぶ重厚なナンバー、Odvip。いかにもアメリカのロックバンドという感じで、じっくりとスロー・ジャムを展開している。


 サウンド的には、スピリチュアライズドを想起させる、ゴスペル的要素を含んだ甘美なサイケデリアとマイ・モーニング・ジャケットのようなフォーク・カントリーを下地にしたジャムサウンドをほどよくブレンドした印象がある。バランスの良い分、突き抜けるようなカタルシスにはやや欠けるかもしれない。が、この叙情性とサイケデリアのせめぎ合い、行き来しながら上り詰めていくような緩やかなグルーヴラインが個人的にはすごくツボ。


 ★★★★☆(18/10/12)