In The Belly Of The Breazen Bull/The Cribs | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

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 「やっぱり」とほとんどの人が思ったであろう、ジョニー・マーの脱退を経て届けられたThe Cribs2年半ぶりの新作。まぁ、確かに3兄弟の中に入るってのはなかなか難しいものがあるだろうし。でも「一時的なものではない」と力強く言ってたのはマーだったような気がするんだけど・・・

 プロデューサーにデイヴ・フリッドマンとスティーヴ・アルビニを迎え制作された新作。オープニングは、まさにデイヴ印のぐっしゃり歪んだギターノイズで始まるGlitters Like Gold。軽快にはねるメロディーとドライブ感あふれるギターサウンド。これが想像した以上にポップな印象をもたらす。続くCome On Be A No-Oneはシンガロング必至の力強いサビを持ったロックンロール。「このコード自分で弾いたら気持ちいいだろうな」と思わせるJaded Youth・・・と明快なギターロックが目白押し。


 音像がややファットになった印象を受けるが、そこはデイヴの味付けの仕方によるところが大きいだろう。アルビニならではの粗暴さと、そこはかとなくサイケの薫りも漂わせるギターサウンドは、土台のしっかりしていない曲だと飲み込まれてしまいかねないが、彼らはそこをしっかりとクリアしている。というのは、彼らの書くメロディーは天性のものと思える力強い輝きを放っているからだ。なかなか言葉にするのが難しいんだけど、わかりやすさを持ちながらも個性的なのだ。


 アルバムの後半になると、サウンドの幅を徐々に広げ、I Should Have Helpedのような美しいアコースティック・ナンバーがあったと思えば、ラスト4曲は組曲風になっていたりと、バンドの可能性を広げようとしている姿勢が見られる。前作でも感じたヴォーカルの一本調子さは解消されておらず、個人的にはそこがやや残念ではあるのだが、順調に成長を続けている事は確か。また、日本盤には4曲ボートラがついているが、これがまた振り切れた曲ばかりで、今後どっちに転がっていっても面白そうという気持ちにさせてくれる。


 ★★★★(30/09/12)