ロサンゼルスで結成された男女混合5人組、Grouploveのデビューアルバム。Tongue Tiedがipod touchのCMソングとなり、ここ日本のお茶の間でも流れることになったのだが、日本盤の発売が未定のまま高い注目を集めている状況にある。
明るくてポップなナンバーが多いが、アルバムタイトルは「ハッピーな歌なんて信じるな!」。まず感じるのは、楽曲のクオリティーが高いこと。昨今「グッドメロディー」というキャッチコピーがあふれているが、その中でも本物は一握りだ。「ちょっとシングル向けのキャッチーなナンバーが入っているからって言い切るんじゃねぇよ」と思うんだけど、彼らは間違いなくフックのあるメロディーを書くことのできる力を持っている。
1曲目、Itchin' On A Photographからキャッチーかつ熱情的なサビが炸裂しいきなり怒濤の高揚感が押し寄せる。2曲目Tongue Tiedは、重めのビートにキラキラの音色を乗せていくMGMTやFoster The Peopleを思わせるようなダンサブルなポップナンバー。3曲目Lovely Cupはサーフチックな風通しの良いナンバー。
と基本線はカラフルなギターロックであるけれど、サウンドの振れ幅はかなり大きい。それでもとっちらかった印象を受けないのは表現したいものが一貫しているからだろう。どんなサウンドを描いても、そこにあるのは一種の刹那感。ハッピーソングにある幸福な情景なんてどこにもないことを知っているからこそ、自分たちは音楽をやることで日々をやり過ごす。日々の怒り辛さを感じなくなるくらい、忘れられそうなくらい自分たちを高揚させる。その意志が実に強固な姿勢となって音に現れていると思う。
ヴォーカルスタイルや洗練されていないサウンド構成など、気になる人がいるかもしれないが、そこを気にする人には全く必要のないアルバムだろう。しかし、どの曲でも一音一音、一つのメロディーにかけられた思いが迸っている。このピュアネス、イノセンスの濃厚さ。そこが若干息苦しく感じられるところもあるのだが。それでも、とてつもない原石であることは間違いない。今後磨かれていくのか、今の輝きを保ち続けるのか、個人的には後者であって欲しいが。
★★★★☆(19/02/12)