Odd Soul/Mutemath | Surf’s-Up

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 Mutemathの3rd。作品よりも、とかくライブパフォーマンスに注目が集まる彼ら。確かに彼らのライブはすごい。って、言葉にしてしまうとなんだか薄っぺらいので、動画で一度見てもらいたい。とにかくこのバンドを見たり聞いたりするたびに、自分は「あぁ、ドラムやりたいなぁ・・・」と思う。


 2年ぶりとなる新作であるが、ここに至るまでにメンバーの脱退があった。バトルズもそうなのだが、こういう超絶的なライブを見せるバンドにとって、そのグルーヴの一翼を担う人間の脱退は非常にセンシティヴな問題だろう。しかしながら、今作はその問題を軽く乗り越え、さらなる進化を見せた一枚となっている。 


 オープニング、Odd Soulから重厚なビートが腹にズシリと響く。前作はグルーヴを前面に押し出しつつも、メロディーとのバランスを上手く取っていたが、今作ではそのバランス感覚が見られない。でも、力任せに鳴らしているというわけではなくて、曲ごとに表現したいものを焦点化しているように感じられる。


 そのせいか、非常に奔放な印象を受ける作品である。例えば8曲目のCavalries。序盤はクリームを思わせるようなブルージーなロックなのに、突如怒濤のファンク・ビートが押し寄せる。そして終盤にはまたブルースへと帰結する。まさにグルーヴ勝負の1曲。何というか、冒頭で述べたようにライブが素晴らしいバンドが、いかにその空気感をディスクに持ち込めるか、これはすごく大事なことだと思う。しかし、今作で彼らはその点についてかなり前進したと思う。というくらい、彼らのライヴに近いグルーヴを感じられる。


 面白いのはダレン・キングという超凄腕のドラマーがいるにもかかわらず、打ち込みのビートが随所に見られることだ。機械と生身のドラムマシンの「激突」というよりは自由な絡み合いは、作り込んでいる感じがなく、適度にフリーキーで、新たな方向性として大いにありだと思う。また、リズムの幅広さにも注目してもらいたい。ジャングル・ビートのPrytaniaもいいけど、個人的にはQuarantineの後半のブレイクビーツとダレンの競演が最高。


 そして、メロウなものは極力シンプルに鳴らそうとしている。All Or Nothing,In No Timeなど,メロディーが前面に出ている曲が、アルバムの中でいいアクセントをつけている。こういうタイプの曲がもう少し洗練されてくると、さらにアルバムの陰影が栄えてくるように思う。


  ★★★★☆(10/12/11)