英カーディフの7人組、Los Campesinos!の通算4枚目となる新作。ズバリ邦題は「さよなら勇気、悲しみよこんにちは」。切迫感あふれる、怒濤のポップネスで3作目までは駆け足で進んでいたように見えた彼らであったが。メンバー脱退などを経て、じっくり時間をかけて制作されたニューアルバム、ジャケットからして今までとは違ったテイストを感じさせる。
プロデューサーは前作「Romance Is Boring」と同じ、ジョン・グッドマンソン。その前作あたりから変化の予兆を見せていた彼らであるが、このアルバムでは、その変化をさらに具体的に展開させている。
今までのアルバムの中に必ず1曲くらいは入っていた、諸手を挙げて「これだー!」と叫びたくなるようなポップなナンバーははっきり言って無い。代わりにあるのは過剰なポップ性を廃し、しっかりとした骨格が浮き上がった楽曲達。
シングルにもなったオープニング曲、By Your Hand、2曲目Songs About Your Girlfriendはまだポップな面影が感じられるものの、3曲目Hello Sadnessのあまりにもまっとうなギターロックぶりには驚いた。直情的なギターが緩やかに上昇しながらグルーヴを描いてゆく。すごくかっこいいのだが、ちょっとロスキャンぽくはない。4曲目のLife Is A Long Timeもそう。この勢いがアルバムのラストまで続く。
アルバムのトーンはこれまでにないダークさに包まれている。メロディーも鮮やかさを捨て、歌や言葉のダイナミズムを伝えようとストイックに鳴っている。バンドの売りであった破れかぶれにも見える男女の掛け合いヴォーカルもあまり見られない。これはまさに「ロックアルバム」だ。
なぜにここまでまっとうにロックしようとしたのかはわからないが、とにかく新生ロスキャンと言えるようなモデルチェンジを果たしたのではないだろうか。そして強く伝わってくるのが、彼ら自身の「リアル」を表現する事へのこだわりだ。そこに徹底的にこだわるからこそ、音だって躊躇無く変化させる。今の彼らにはこれくらいダイレクトに痛切さを伝えなければならないという意志があるのだろう。タイトルの通り、彼らは悲しみと真正面に向き合うことを選んだのかもしれない。こういうバンドは信頼できる。
★★★★(2/12/11)