All Eternals Deck/The Mountain Goats | Surf’s-Up

Surf’s-Up

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Surf’s-Up The Mountain Goats、通算18作目のアルバム。かなりのベテランバンドなのかと思ったら、結成して20年とちょっとらしい。ということは、毎年のようにアルバムをリリースしている計算になるが、自分は今作が初体験。USインディ、最後の大物と言われるジョン・ダーニエルを中心としたバンドでドラムのジョン・ワースターはスーパーチャンクのメンバーでもある。4ADからマージに移籍後初のアルバムがこのAll Eternals Deckだ。


 シンプルで歌心のあるロックを聴かせるバンドだ。USインディといっても、ローファイなテイストや非コマーシャル的な音作りは見られない。素直に良いメロディーと歌があるだけだ。それはある意味地味にも写るのだが、目立たなくてもこういう素晴らしいロックをギミックなしに聴かせてくれるバンドが、まだまだいるのだろう。本当にUSインディの裾野の広さを感じる。


 1曲目Damn These Vampiresは歌心のあるミディアムナンバーだ。シンプルながら眼下に景色が広がるようなスケールの大きいナンバーとなっている。2曲目Birth Of Serpentsもキャッチなメロディーと朗々と歌うジョンのヴォーカルが気持ちいい。しゃがれていないブルース・スプリングスティーンのようにも聞こえる。3曲目Estate Sale Signは一転してタイトなロックンロールナンバー。4曲目Age Of Kingsはもの悲しげなストリングスが緊張感をあおる。


 と、このような調子で曲調はある程度のヴァリエーションがある。が、基本的なトーンはフォークをルーツにしたシンプルなロックサウンドであり、そこがしっかりしているのでブレを感じずに聴くことができる。あと、ジョンのヴォーカルにも不思議な味がある。エモーショナルな歌い回しなんだけど、曲によってはルー・リードのようなクールなかっこよさがある。


 また、ソングライティングの力も素晴らしい。流麗で渋みのあるメロディーラインは、さすがベテラン、いや天才ソングライターのなせる技といったところか。噛めば噛むほど・・・の典型的好例。個人的には素直にアメリカンロックの良さを引き出そうとしている姿勢に、Wilcoあたりと似たものを感じる。


 ★★★★☆(09/11/11)