ハナレグミ、5作目のアルバム。 初回限定盤にはアルバム制作のドキュメンタリー映像が付いているが、これがなかなか面白い。まずプライベート・スタジオを永積タカシ自身が内装しながら作っていくシーンから始まるのだが、その過程がなんだかとてもリアルだったのだ。自分のイメージよりはずっとハンドメイドなもので、アナログのレコーディング機材を持ち運ぶなど、こだわりも随所に見られていた。
完成したスタジオ「ちゃかちー」でほとんどのレコーディングが行われ、完成した11曲。オープニングは「あおい きれい」という素敵なギターインスト。そこから、ファンキーなシャウトで始まる「Crazy Love」はお得意のレゲエ調ナンバー。そこからはじけるラテン系「オアシス」でアルバムは最初のハイライトを迎える。陽気なホーン、高校生のコーラスも入って祝祭的なノリが心地よい。
4曲目「Spark」からは少し落ち着いたナンバーが続く。5曲目「きみはぼくのともだち」は歌詞を原田郁子が書いているが、これが素晴らしい。永積タカシはこの曲について「大切なものを守ろうとするよりも、逆に捨ててしまう中で自分に残ったものが本物だと思う」という趣旨の発言をしていたが、今の自分があるがままの自分でいることを恐れなくなったのは、この歌の影響が大きいと思う。
7曲目「ごっつあんです ~今夜はジュワイ欲中毒~」はこれまたバタ犬時代からお得意のパターン。スイートソウル調です。8曲目「か! た!! かたち!!!」はちょい下ネタが入ったファンクナンバー。意味のない言葉の響きが良い具合にはまっている。
そして終わりの2曲は、非常に重い。10曲目「天国さん」は、永積タカシの祖父の葬儀の様子を歌っている。そこで見せる、自分の家族の見たことのない姿。息子でさえ知り得ない、父や母が「子どもになる」姿。そういうものが脈々と受け継がれていくという人間の環がふと浮かんでくるような感動がある。
今作の中で一番自分の心に寄り添ってくれたナンバーは、ラストの「ちきしょー」。初めて聴いたときはボロボロに泣いてしまったが,「ちきしょー」という言葉に愛するものへの全ての感情が集約されていく,その瞬間何ともいえない気持ちになってしまう。この歌のように、本当に大切なものは形にならないのかもしれない。だからこそ愛おしい。それはわかる。でも、それ故に途方もない切なさもある。
君が残した このおもいは
教えた このおもいは
いつも どまんなかにあるよ 忘れてなんかないよ
今 生まれるものでいい 今 消えゆくものでいい
形なんて残さないで 目を閉じて聴いていて
こんなにも うれしい こんなにも かなしい
こんなにも 愛しい 恋しいよ
グッと くるよ ちきしょー
「ちきしょー」
★★★★☆(07/11/11)