最終日のフジ、ホワイトステージのトリとして圧巻のステージングを見せたWilco、2年ぶりの8作目。リリースに当たって、自分自身のレーベルを立ち上げた彼ら。新たな環境の中制作された今作は、そのどれもがウィルコらしくありながら、全体的には非常に新鮮な感覚をもたらしてくれる内容となっている。
1曲目Art Of Almostはまさに、オルタナ・カントリーの王道のようなサウンド。不穏なノイズ、ループするリズムにアヴァンギャルドなシンセやストリングス、フリーキーなギターが絡んでいくという、Yankee hotel foxtrotが好きな人にはたまんない1曲。めちゃめちゃかっこいい。しかし、2曲目リードトラックとなっているI Mightはキャッチーなオルガンと四つ打ちビートの軽快なナンバー。と最初の2曲でこの振れ幅である。
その後も、骨太で伝統的なアメリカン・ロックなもの、初期のシンプルなカントリーサウンド、あっけらかんとしたポップ調のものなど、実にバラエティーに富んだ内容となっている。
優しげなメロディーにため息の出そうなSunloathe、ジェフのはねるようなヴォーカルがたまらなくポップに聞こえるDawned On Meこれぞギターロックと言わんばかりにわかりやすいリフを持ったBorn Aloneなど、めまぐるしく変わる曲調は、かつての彼らのアルバムと比較すると、落ち着いて聴けないかもしれない。でも、おそらく昔からのファンはそのどれもが、ウィルコであれば「あり」だと思うような気がする。
というのが、彼らの歩みが伝統的なものの現代的あり方を探求する「旅」であるからだ。先人達の財産を受け継ぎながら単に守り通すだけではなく、可能性を探りながら、現代的なエッセンスを加えて鳴らすという一種の「冒険」でもある。ウィルコはその姿勢をかたくなに守り続けている。今作はその歩みの集大成のようなものだし、彼らの音楽的ポテンシャルの高さを改めて証明した作品でもある。
★★★★☆(6/11/11)