Smoke Ring For My Halo/Kurt Vile | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up
 Kurt Vileを知ったのは、Mayさんのブログ
から。自分もKurt Vileの事はあんまり知らないのだが、元War On Drugsのメンバーで、今はソロ活動をしているとのこと。米・マタドールからのリリース。おそらく日本盤はリリースされていないと思う。


 アコギを抱えるモノクロの写真から、地味目のストイックな弾き語り作品なのかと思ったが、思ったよりも歌メロの立った、かっちりとした作りのアルバムになっている。

 1曲目Baby's Armsはアコギをつま弾きながらの歌にさりげない味付けが施された、心地よいアシッド・フォーク。真っ昼間から酩酊しているような白昼夢的世界が広がる。ドリーミーというよりは、妄想的な感じだろうか、ドラッギーでやや不健康な空気感がそこにはある。


でも2曲目キラキラとしたアコギの音色が眩しいJesus Feverは一転清涼感さえ感じさせる風通しの良いナンバー。まさにキラー・チューンとしても申し分のない曲になっている。意外とバラエティーに富んだ楽曲を作れる人だなということがわかる。


 実際Puppet To The Manのように渋くブルージーなロックもあれば、Society Is My Friendのように重々しいビートに乗せて歌われるスケール感の大きいナンバーもある。でも基本線はRunner UpsやPeeping Tomboyのようにアコギでぶっきらぼうな歌を聴かせるところにあると思う。実際自分もそういうシンプルな歌のほうにより魅力を感じる。


 ただ、バラエティー豊かな作品といわれるものの中にはどうにもトータルで見ると散漫に思えるものもあるが、このアルバムにはそれがない。むしろどんな曲をやっても必ずKurt Vileという人間の顔が見えてくるのだ。おそらくそれは、アコギの音からカートの歌声まで、独特の雰囲気があるからだと思う。親交のあるサーストン・ムーアに近い雰囲気を感じるのだが、どうだろう?人間の感情の深部に鋭く刺さってくるような音のように自分には感じられる。それはどちらかいうと痛みや哀しみを幾度も経験して生まれてくるような音のようでもある。


 そして、この人の書くメロディーも非常に好みだ。天然でシンプルな美しさがあると思う。これもまた辛い時期によく聴いたアルバム。ちなみにプロデュースにジョン・アグネロが参加している。オルタナ・グランジ好きな人に是非聴いて欲しいです。これ、ノイズのないグランジです。


 ★★★★☆(29/10/11)