ノエル兄さん、満を持してのファースト・ソロ・アルバム。Oasisの脱退劇から約2年ちょっと。時々ソロライブを行うくらいで特に目立った行動を取っていなかったが、ロンドンとロサンゼルスで密かにアルバム制作を進めていたようである。
かねてから、ソロではスタジアム・ロックから離れて、「ノエル・ギャラガー」というシンガーソングライターのアルバムを作りたいと公言していたが、確かにOasisと比べると爆音レベルは下がっている。でも、いわゆるシンガーソングライターのアルバム、というイメージもそれほど湧いてこない。
というのは、アレンジ面で、非常にゴージャスな音作りをしているからだ。トラックも壮大なスケールになっているものが多く、そこにストリングス、コーラス、ホーンなど重厚な味付けが多用されている。中にはビッグバンド・ジャズ風なものまで。ストリングスはOasis時代から時々使われていたが、今作ではThe Masterplanレベルで使われている曲が幾つもある。
もちろん稀代のメロディーメイカーらしく、素晴らしい質の楽曲が並ぶ。ただ、音楽性が急に変わると言うことはなく、基本的にはOasis時代のノエル・ヴォーカル曲の延長線上にあるが、今作ではノエルの「歌」が非常に伸びやかに聞こえる。シンガーとしての自己主張が強くなったとでもいうのだろうか。また、所々に男の色香を漂わせていて、ヴォーカリゼーションの進化が見て取れる。
オアシスのフォーマット、構成上の制約から離れて作られたという意味では今作はすごく興味深い。ラウドなギターもほとんど無いし、ギターソロも2曲だけ。アコースティック・ギターが主体となっているものが多い。固定されたメンバーのバンドでいるとなかなかこういうことはできなかっただろう。
Oasisでやった方が良い、リアムが歌った方が良い、という曲は皆無。そこは大いに評価したい、というかホッとした。ただ、The Death Of You And Meは漂う哀愁がThe Importance Of Being Idleのようだし・・・とついつい比較してしまうのだが。でも、個人的には後期oasisのノエル・ヴォーカル曲よりはずっと良いと思う。来年また新作がリリースされる予定だそう。この水準はキープしてもらいたいところ。やっぱり好きです。
★★★★(26/10/11)