Battles,3年ぶりのセカンド・アルバム。サウンド面でも中核を担っていたギタリスト、タイヨンダイ・ブラクストンのまさかの脱退でバンド自体がどうなるのか危ぶまれたりもしたが、残った3人で無事にアルバムを完成することができた。
この新作の制作中、メンバーはタイに脱退の意志を告げられたそうである。手元には完成に近かった新作の音源が残されていたが、3人はそれを全て破棄し、新たな音源を作り上げたそうだ。
前作「Mirrored」は、グツグツと煮えたぎった音のパワーがギュンギュンに詰め込まれたような、「とてつもないもの」がそこにあった。もちろんそれは、音楽として成立しうるためのアイディアとテクニックがあってこそのことである。
で、この新作はどうかというと、「とてつもないもの」という要素は明らかに減退している。でも、これは減退というよりは「Mirrored」を経験している故の聴き手の体制の変化によるものだろう。相変わらずいびつで脳を揺さぶっていくバトルズ・サウンドは健在だ。
それでも、全体的な「聴きやすさ」は遙かに向上している。Matias Aguayoをゲスト・ヴォーカリストに迎えた「Ice Cream」のポップ感は今までのバトルズにはなかった。異空間のリゾート地で鳴っているようなトロピカル・ソング、そんな風に自分には聞こえる。
「Ice Cream」以外にもヴォーカル曲にはゲストを迎えているが、各曲に見事にはまるゲストを迎えている。特に「My Machines」のゲイリー・ニューマンは最高。「Sundome」のYamantaka Eye は意外に控えめでした。もちろん、前作を踏襲したシフトチェンジをひたすら繰り返すような変態ナンバーも健在。個人的ベストトラックであるWall Streetはまさにそれ。
全体を見ると、どの曲も垂れ流されることなく、適度なタイト感があるのも良い方向に働いていると思う。この「聴きやすさ」をおそらく歓迎しない人もいるだろう。確かに異物感に満ちていた前作に比べると、あまりにもスルリと入ってくる今作に、自分も最初は物足りなさを感じた。しかし聞き込んでいくと、その「枷の無さ」が心地よくも感じられる。変な言い方だが、純粋な意味での「音楽」に集中して聴くことができる。
★★★★(23/10/11)