Akron Familyのニューアルバム。前作「Set Em Wild, Set Em Free」は大好きなアルバムで、古典的アメリカンロックの要素と、フリー・ジャム的なグルーヴ感が絶妙なバランスを見せていた。ブルックリンのバンドであるが、音楽性としては昨今のブルックリン系の中ではかなり異質だろう。
今作の制作については、なんでも、彼らが北海道のことを気に入り、雌阿寒岳の麓で曲作りを行ったとのこと。中にはフジという名の曲もある。非常に日本にゆかりの深いアルバムとなっている。
オープニング、Silly Bearsは怒濤のグルーヴィー・チューン。ずしりと響くドラムに艶やかなギターリフ、まさに祝祭の始まりといった雰囲気を持つ曲だ。幅広う音楽性を持つ彼らであるが、個人的に一番興奮するのは、こういう粘着質なグルーヴを持った曲だ。
個人的に一番素晴らしいと思う曲Another Skyでは、地を這うベースラインに殴りつけるようなドラミング、変態的なギターリフが炸裂し、半端無い破壊力を見せている。まさに、このジャケットのごとく「噴火型」グルーヴとして、究極の姿を作り上げることに成功している。
骨太のグルーヴ、汗臭いさや土臭さを感じさせるロックサウンドを基本としながらも、メロディーは前作よりも更にオーガニックになったような印象を受ける。A AAA O A WAYはミニマルなテクノでありながら、メロディーはフォーキーで、結果全体は民族音楽のような太古のグルーヴを感じさせる曲となっている。
楽曲の出来にややばらつきが見られるなど、少し詰めの甘さが気にはなるが、バンドの方向性や武器となるところにぶれは感じられない。アニコレのようにサウンドスケープの緻密さを求めるのではなく、あくまでロックバンドのエネルギーをダイレクトに感じることの出来る音作りに徹している方が、彼らの音楽性にフィットしている。グルーヴに特化した曲がもう少しあったほうが面白いと個人的には思うが。
★★★★(10/03/11)