モグワイ通算7作目のアルバム。前作から2年半ぶりとなる。今作はプロデューサーにあの「Young Team」を手がけたポール・サヴェージを起用。個人的にはこの1stが彼らの作品の中で一番好きで、あの「静」と「動」がスイッチする瞬間がもたらすカタルシスは、今でもこのアルバムを聴くと体感することができる。よって、このアルバムに自分は「young Team 2」的なものを期待してしまった。
しかし、いや当然のごとくその期待は見事に裏切られた。オープニングのWhite Noiseの高揚感溢れる展開は、ポストロックではお決まりのパターンであるが、案外Mogwaiではあまり見られないタイプ。続くMexican Grand Prixはヴォーカルとオルガンがフィーチャーされたナンバー。ここでの疾走感もまた新鮮に感じられる。そして、Rano Panoでは 重厚なギターとそれを切り裂こうとする強烈なドラミングとの絡み合いが見事。
1曲1曲がバラエティー豊かなテイストとなっているし、ここ2,3作で取り組んできた歌ものにも磨きをかけてきている。また、新たな挑戦もしっかり行っている。と、非常に焦点が絞りにくいアルバムではある。しかしそれでいて、まとまりがない印象はない。むしろ、どんな曲も「Mogwaiだ」と思わせるような空気感を持っている。上手く説明できないが、そこに存在する空間を目一杯の音で埋め尽くしてしまうような意志でMogwaiの音楽は鳴らされているように思える。しかしどれだけ壮大であっても、過剰ではない、隙のないサウンドスケープなのだ。そこがMogwaiの生命線でもある。
個人的に好きなトラックはDeath RaysとToo Raging To Cheers。かつてのMogwaiを強く感じさせる、と言ってしまえばいささかネガティヴだが、自分はこういったタイプの曲が好きなのだからしょうがない。あとヘヴィ・ロックギリギリなメロディーラインのSan Pedroも面白い。George Square Thatcher Death Partyの闇雲なドライブ感はライブ受けしそう。
割と楽曲の時間がコンパクトなせいか、あっという間に聴けてしまう。結果的には原点回帰でもなく、野心作でもない、これまでのキャリアを総括し、新たな指針も感じさせるようなアルバムとなっている。まだまだこの先を期待しても良いだろう。凶暴且つ美しきノイズを更なる高みへ!
★★★★(06/03/11)