米シカゴの若手ロックバンド、Smiths Westerns。まだ日本盤はリリースされていないものの、アメリカではすでに2枚のアルバムがリリースされ、非常に注目を集めているバンドである。ピッチフォークでも(あまりこの媒体、自分は信用していませんが)高評価を得ており、もっとブレイクしてもおかしくないのだが日本ではまだまだ無名の存在。そこで、このバンドを大いにアピールすべく、1st,2ndをレビューしたいと思う。
まず1st「Smiths Westerns」。メンバー全員10代ということで、とにかく原石的な魅力が詰まったアルバムとなっている。形式はオーソドックスなギター・バンド。演奏は荒削りというより、たどたどしささえ感じるくらい。録音状態もあまり良くなく、ロー・ファイ感に満ちあふれたサウンドである。オープニングのDreamsから疾走しまくるノイジーなギター・ロックは、例えるとWavvesあたりと近いかもしれない。
しかしながらメロディーは超ポップで、強烈なフックを持ったものばかり。ブギー調のGirl In Love、Guided By Voicesを思わせるようなBe My Girlなどシンガロング級のナンバーも揃っている。これが、この乱暴なまでのローファイ・ギターロックと最高の相性を見せているのだ。またメンバーの若さも良い方向に働いているように思われる。音像を整えようとせず、表現へのピュアな感情をそのまま放出することによって、既成概念にとらわれることなく自分たちの音を確立することに見事に成功している。
ゆえにこのアルバムは未完成ながら、手を付けるところが全く見あたらないという、1stとしては最高のものとなっている。
そして2nd。オープニングのリードトラックWeekendの完成度にまず度肝を抜かれる。ここでは1stで未分化だった要素が幾つも花を開かせている。サウンドはかなり整理され聴きやすいものとなった。ギターは相変わらず歪んでいるものの余計なノイズはなく、それゆえに彼らのソングライティングの力もよりダイレクトに伝わるようになった。続くStill Newに至ってはサビのギターリフがスケール感の大きさを感じさせるほどで、バンドのスキルアップが良い方向に働いている。
Imagine PT.3.の直球ポップ、やるせなさを醸し出すAll Die Young,バンド名からWesternsという単語が抜け落ちてしまったかのようなDance Away(細かいつっこみはご容赦願います)など、曲のバリエーションも格段に増えた。それでいて、完成度も文句なし。センスの良さだけでなく、作り込むことをほどほどに抑えているところがあるので、統一感が失われていない。
何でも今作ではブリット・ポップを意識した音作りをしたようだが、なるほどと頷ける。自分には「渋谷系」という言葉が浮かんでくるほど、フックを重視したメロディーラインが展開されている。バンドとしては明らかに成長を見せている2ndであるが、ただ、個人的にどちらが好みかと言われれば1stの方が好きである。
とにかくどちらのアルバムも素晴らしく、ギターロックの魅力の普遍性を十二分に感じさせる、今自分が大好きなバンド。ちなみに1stと2nd、同じコンポで続けて聴いてみてほしい。あまりの録音レベルの違いに思わず笑ってしまう。
★★★★☆/★★★★☆(5/3/11)