COSMONAUT/BUMP OF CHICKEN | Surf’s-Up

Surf’s-Up

音楽の話を中心に。時にノスタルジックに

Surf’s-Up
 バンプ・オブ・チキン、通算6枚目のアルバム。自分がバンプと出会ってから、もう10年以上になる。そんなに経ったのか。ということは当然バンドのキャリアも10年以上というわけで、まるでピンと来ない。


 ロックバンドがセールスで苦戦する中で、シングルを出せば当たり前のように1位になり、おそらく中高生の中でも支持率の高いロックバンドとして存在していることと思う。デビューしたてのフレッシュさとわかりやすいメッセージ性で強引に若者の心をつかもうと躍起になっているバンドたちが多い中で、彼らはそうすることをせず自分たちのペースで着実に成長を遂げ、結果いい大人になった昔からのリスナーだけではなく、その層を広げ続けてきた。


 全14曲。前作から約3年。ここで見せた成長は「バンドアンサンブルの深化」である。


 オープニングを飾るのは「三つ星カルテット」。このイントロの流麗なアコギにまず耳を奪われる。アコギを中心としたオーガニックかつジャムっぽいサウンドが実に素晴らしい。今まで自分はバンプを歌詞やメロディーを基準にして聴いてきたが、ここでは完全にバンドアンサンブルがそれらを凌駕している。もちろん歌詞やメロディーがたいしたこと無いという意味ではない。それ以上に瑞々しくグルーヴィーなバンドアンサンブルが心にグイグイと迫ってくるということだ。


 元々サウンドにもこだわりを見せてきたバンドであるが、ここでの充実ぶりは目を見張るものがある。ギターの絡み合い、リズムセクションの迫力など、最初はCDの音質が良くなったのかと勘違いするくらい迫ってくるものがある。「モーターサイクル」の細かく刻むリフと縦横無尽なリズムライン、サビに傾れ込む時の切れ味の良さなど、以前にはなかったような感触がある。


 「R.I.P.」「透明飛行船」などで見せる直情的なギターもこれまでの作品から比べると線ががっしりとした感がある。ファットになったというよりは、しなやかさが増した印象だ。もちろんビルドアップした姿ばかりではなく、「ウェザーリポート」のように軽快なギターロックがあったり、暖かみのある「66号線」、前作の「かさぶたぶたぶ」の様に夢をゴミにフォーカシングした「分別奮闘記」など、従来のバンプもしっかりとそこにある。


 歌詞の世界観は、基本線は変わらないと思うが対象の事象がどんどん増えているように感じる。言葉遣いも微妙に変わり、この辺は物足りなく思う人もいるかもしれない。しかし、「魔法の料理~君から君へ」など、両親も歳を取り、家族を持った今だからこそ自分の心に染みる。背伸びをしたり、知ったかぶりをするのではなく、自分の視点から聴き手をくすぐるような言葉でしっかりと描写できる力を藤原基夫は持っていると思う。


 本当に、このバンドは強くなった。心からそう思う。


 ★★★★☆(13/02/11)