副題The True Lives Of The Fabulous Killjoysと称されたニューアルバム。マイケミは正直昔はそんなに興味がなかったのだが、周りが「いい」「いい」というので聴いてみたところ、キャッチーとはまた違う、明快なメロディーを持った曲が多く、なかなか良いと思うようになった。
いくら良くても、質が高くても、小難しいものばかりでは世の中どうにかなってしまう。キッズが心酔できるようなロックンロールがないと。自分も小学生の頃はロックスターに憧れてたわけで、一瞬にして心をつかむためには「わかりやすさ」が必要だ。
ただ、前作The Black Paradeはそういう視点抜きに、素晴らしい傑作だったと思う。コンセプト・アルバムという枠の中で様式美とも言えるような、荘厳な世界を作り上げた。隙の無さというか、楽曲の完成度も含め、おそらく彼らの最高傑作だと思う。もちろん世界的にも好セールスを収め、その年のベストアルバムの一つとして多くのメディアで取り上げられた。
そんな中次作の制作は難航したようで、ブライアン・オブライエンと作業して作り上げた音源を一度白紙に戻した上で、新たに作り上げられたのが今作である。そして、今作は徹底的にエンターテイメントに徹した作品となっている。2曲目のリードシングル、NA NA NAの吹っ切れ振りがそれを如実に物語っている。
なんてたってさびのコーラスが「ナーナナナー」なのだ。これを口ずさめないキッズはいるだろうか?英語がわかんなくたって、アメリカのロックソングを歌えてしまうのである。これってとても大事なことだと思う。楽曲は依然としてわかりやすい、強いフックを持ったサビのある曲ばかりである。ただ、前作よりもバラエティに富んでいて、ラップ調のヴォーカル曲Planetary (GO!)、切なげな青春ロックSummertimeではシンセが大々的にフィーチャーされている。またSingやThe Kids From Yesterdayの壮大なスケール感を持つ曲も前作にはあまり見られなかったものだ。
いかにもマイケミらしいシンガロングなロックンロールももちろん健在。前述のNA NA NAだけではなくBulletproof Heart、The Only Hope For Me Is Youの真っ直ぐな感じは、逆に今の時代なかなかない。まさに小難しいことは考えないで、素直に楽しむべきアルバムに仕上がっている。
もちろん、いかにもアメリカン・コミック的な世界観やサウンドが嫌いな方には馴染まないだろう。個人的には前作の完璧な世界観が好きだったので、今作は好んで何度もリピートするような作品ではない。でも車の中で聴いたり、「ちょいと景気づけに」という気分の時に聴くにはピッタリだなと思う。コンポの前でじっくり聴くには少々疲れてしまうというか、僕にはやや味付けが濃い。でも何度も言うが、直感的にいつの時代にもこういう作品は必要な感じがするのだ。
最後に。8曲目Party Poisonだけは絶対にいただけない。あの日本語ナレーションはげんなりする。「からだが いたく なるまでー」って絶叫されてもなぁ。飛ばして聴きましょう!
★★★☆(05/12/10)